抄録
本研究の目的は,震災による被害と,今後の不安感の規定因について解明することである。仙台市と,その北部に隣接する内陸部の郡部(仙北地域)において,独自の統計的社会調査を行った。分析の結果,不安感は財産保有数や階層帰属意識などが影響しており,社会階層構造との関連があると言える。また,企業規模や関係的資源や居住年数も,不安感に影響を与えていた。被害金額は,関係的資源や財産保有数に規定されており,社会階層との関連があった。また,地域ダミー変数も規定力を持っていた。被害金額については地区別の違いが明確にあったが,不安感ではなかった。社会意識については,住んでいる地区の特徴よりも,現在の仕事の状況や,従業上の地位の影響が強い。日本においても,被害や意識に対し,財産保有や関係的資源など社会階層の影響があるといえる。