2014年3月16日,ウクライナのクリミア自治共和国で,ロシアの一部となるかウクライナに残るかを問うレファレンダムが実施された。ウクライナ政府はレファレンダムを無効としたが,クリミアは9割以上がロシアへの編入に賛成したとして独立決議を採択,ロシアと同国の一部となる条約を締結した。クリミアでは1991年と1994年にもレファレンダムを行っており,ウクライナからの分離運動を展開していったが,その特徴は,ロシアとの「再合同」を最終的な目標としていたこと,ソ連という特殊な国家の負の遺産が介在していたこと,自決権の行使をめぐる問題が「入れ子」のように重層的な構造であること,そして対外的な要因が影響していたことなどである。本論では,これらの点を明らかにすることによって,2014年のクリミア・レファレンダムがもつ意味を考える。