2016 年 32 巻 2 号 p. 5-17
2016年6月23日に実施されたEUレファレンダムは,イギリスのEU離脱をほぼ決定づけた。本稿は,あえてレファレンダムの実施に踏み切ったキャメロンの意図などを中心に,レファレンダムを実現に至らしめた「イギリス的前提条件」について先ず分析する。 次に,EUレファレンダムにおける「イギリス的結果の1側面」,即ちイングランドでの Brexit志向の強さを解明し,それに関する1つの見方(解釈)を示す。前者は,憲法習律化やイギリス保守主義,とりわけイギリス保守主義に内在する「ステイトクラフト」の側面から説明することができる。また後者については,戦後の歴史的文脈などから,何らかの点でEnglishnessとの関係性も明らかになった。以上の考察を通じて,2016年 EUレファレンダムは,”British” politicsという見方の「終わり」の始まり,あるいはBritish Conservatismに対するEnglishnessの勝利と言い換えることも可能となる。