抄録
過半数を制した政党がない状態(宙吊り議会)が生じたにも拘わらず,2017年イギリス総選挙の最も注目すべき特徴は,二大政党政治への回帰であった。しかし,それは年齢をベースとした新たな二大政党政治への変容であり,若年層の労働党支持増大に示される,社会的リベラル-保守主義といった社会文化的な対立軸の台頭を意味している。保守党の敗因,労働党の躍進要因,2016年のEU国民投票とその結果が今回の選挙にどのような影響を与えているのか,こういった点を中心に,2017年総選挙の水面下で進行するイギリス社会の分断状況と政党政治の変容の諸相を明らかにする。社会文化的対立軸は,従来,左-右の経済対立軸と交差し,イギリス政党システムの多党化を促進してきた。しかし,今回の選挙では,社会文化的対立の表れでもあるブレグジットが,UKIPの事実上の解体とSNPの後退をもたらすことで,多党化への傾向を逆転させ,二大政党政治への回帰をもたらすことになったことを指摘する。