2018 年 34 巻 1 号 p. 66-80
本稿は,アメリカ選挙法の一側面として,Shaw型訴訟と呼ばれる人種的ゲリマンダリング訴訟を取り上げ,その近時の動向を明らかにするものである。Shaw型訴訟はこれまで,主として,人種的マイノリティの代表選出の機会を確保するマイノリティ多数選挙区を,合衆国憲法第14修正の平等保護条項の観点から抑制する保守的な訴訟として位置づけられてきた。しかし近時,共和党が支配する州議会が,党派的利得を得るために,差別救済法である投票権法の遵守を名目として,マイノリティ特定選挙区にマイノリティを過度に詰込む区割りを行うようになったことを受け,これまでShaw型訴訟に批判的であったリベラル派裁判官が,Shaw型訴訟の法理を用いてこれを掣肘しようとする,という構図が生じている。