2019 年 35 巻 1 号 p. 19-34
候補者に関する要因は,政党や政策争点に関する要因と並んで有権者の投票行動を規定する重要な要因とされてきたが,他の要因と比べて知見の蓄積が進んでいないといわれる。本稿は,異なった種類の選挙の候補者についてのイメージを自由記述式と選択式の2つの方式で尋ねるという,先行調査とは異なる設問を設けた金沢市における意識調査のデータを分析することによって,候補者要因の研究に寄与することを企図した。分析の結果,有権者が持つ情報量が少ない候補者についてのイメージは,仕事,能力,人柄に関するものではなく,政党,政策,属性,経歴など外形的な特性に関するものが多いことや,個々の選挙特有の要因に関するイメージや候補者の属性などからくる漠然とした新人候補への期待感など,選択式設問では汲み取ることができない候補者イメージが投票行動と関係していることなどが明らかになった。