選挙研究
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35 巻, 1 号
選挙研究
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 大川 千寿
    2019 年 35 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,2012年に発足した第2次安倍政権の政策展開の構図・戦略について検討する。安倍晋三氏は,この政権において経済最優先を旗印とし,自らの経済政策「アベノミクス」を前面に押し出した。しかし,これは第1次政権以来の,安倍氏の保守的信条を背景とした「戦後レジームからの脱却」という目標の放棄ではない。むしろ,未達成の憲法改正への意欲を繰り返し語り,経済政策をその支持調達の手段として用いた。実際,アベノミクスを政権のシンボルとして,現実主義的な姿勢をアピールし,またステージ化することで,社会保障や消費増税といった重要課題も経済活性化の論理へと吸収していき,幅広い有権者の期待感を持続させることに成功した。こうして選挙での連勝,長期政権という実を得たが,経済こそが政権の正統性の源泉として定着し,憲法改正への民意を問いづらいというジレンマを抱えることとなった。
  • 金沢市における意識調査データの分析をもとに
    岡田 浩
    2019 年 35 巻 1 号 p. 19-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    候補者に関する要因は,政党や政策争点に関する要因と並んで有権者の投票行動を規定する重要な要因とされてきたが,他の要因と比べて知見の蓄積が進んでいないといわれる。本稿は,異なった種類の選挙の候補者についてのイメージを自由記述式と選択式の2つの方式で尋ねるという,先行調査とは異なる設問を設けた金沢市における意識調査のデータを分析することによって,候補者要因の研究に寄与することを企図した。分析の結果,有権者が持つ情報量が少ない候補者についてのイメージは,仕事,能力,人柄に関するものではなく,政党,政策,属性,経歴など外形的な特性に関するものが多いことや,個々の選挙特有の要因に関するイメージや候補者の属性などからくる漠然とした新人候補への期待感など,選択式設問では汲み取ることができない候補者イメージが投票行動と関係していることなどが明らかになった。
  • 河村 和徳
    2019 年 35 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    2016年参議院議員通常選挙福島県選挙区において,野党統一候補である民進党の増子輝彦が勝利し,現職閣僚(法務大臣)である岩城光英が落選した。現職閣僚の落選は,2010年参院選以来の出来事であった。安倍内閣は,内閣発足以降,原子力災害の被災地である福島に寄り添う姿勢を強調してきたことを考えると,岩城の落選はショッキングなニュースであった。本稿では,自民党の復興政策に対する評価が投票行動を規定したのか,福島県で実施した意識調査のデータを用いて検討した。その結果,政党支持をコントロールしても,自民党の復興政策を評価する者は岩城に投票する傾向があることが確認された。なお,岩城が接戦をものにできなかったのは,自民党支持者の中に元自民党国会議員である増子に投票する者がいたためであり,また政党支持を持たない有権者の復興政策評価が芳しくなかったためであった。
  • 2017年総選挙・2018年知事選・2019年県民投票の分析
    久保 慶明
    2019 年 35 巻 1 号 p. 44-59
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,2017年総選挙,2018年沖縄県知事選,2019年沖縄県民投票の分析を通じて,沖縄県内の政治過程の持続と変容を明らかにする。17年総選挙では,オール沖縄内の選挙区すみ分けが機能する一方,自民党と公明党の選挙協力の効果が前回から回復し,有効投票率の上昇が自民党候補の得票率向上に寄与した。沖縄4区では自民と維新が候補者レベルで選挙協力し,自民党候補が当選した。18年知事選では,オール沖縄における保守系勢力の縮小と,自公維の選挙協力という変化が起きたものの,得票構造の変動は小規模なものにとどまり,翁長雄志の後継である玉城デニーが当選した。19年県民投票では,総選挙や知事選を超える辺野古埋め立て「反対」の民意が表出された一方,自民党の強い地域では「どちらでもない」への投票や棄権が多かった。こうした結果は,14年に成立した構図が有権者レベルで持続していることを示している。
  • 鳥取県を事例として
    春日 雅司, 竹安 栄子
    2019 年 35 巻 1 号 p. 60-75
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,戦後から現在に至る鳥取県を事例として,各種選挙結果やいくつかの調査結果を踏まえてその歴史をたどることで,地方議会における女性議員の過少代表の原因を明らかにし,今後この問題を克服するための方策を論じるものである。鳥取県に限定された事例ではあるが,全国の多くの地域に共通する歴史と課題を提示できると考える。分析にあたって,過去 70年余りの時代を,「抑圧からの解放」期,「長い低迷」期,「一村一女」期,「ゆるやかな増加」期の4期に区分した。1947年4人でスタートした市町村議会の女性議員は 51年には6人へと増加するが,その後長く低迷する。1983年に男女共同参画推進や「マドンナ・ブーム」もあり1%を超え,さらに4分の3の自治体に最低1人女性議員がいる時代を迎え,2009年にようやく 10%を超える。しかしその後は 11 ~12%で停滞している。女性議員の過少代表を克服するには,ジェンダー・クオータの導入と同時に人材育成,女性への偏見根絶に向けた高等教育の現場での啓蒙活動,さらに選挙制度改革などを進めることが必要であると考える。
  • 堤 英敬
    2019 年 35 巻 1 号 p. 76-89
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    2000年代半ば以降,自民党では公募や予備選といった開放的な方法を通じた候補者選定が行われている。候補者選定は議会政党の構成を規定する重要な機会であるにもかかわらず,なぜ自民党は党によるコントロールを弱めるような改革を進めてきたのだろうか。本稿では,自民党の候補者選定が地方組織主導でなされていることに着目し,選挙区レベルでの地方組織を取り巻く環境やその組織的性格が,開放的な候補者選定方法の採用に及ぼす影響について検討を行った。2005年以降の国政選挙を対象とした候補者選定方法の分析からは,選挙でのパフォーマンスが振るわない選挙区や(衆院選では)伝統的な支持団体の動員力が弱い選挙区で,公募等の開放的な方法が採用されやすいこと,また,公募制を採用するにしても,既存の支持団体や党員組織に配慮した候補者選定方法が採られていることが明らかになった。
  • 山本 英弘
    2019 年 35 巻 1 号 p. 90-102
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,新自由主義的な政策が主流をなす現代社会において,利益団体間にどのような利害関係がみられるのかを,経済政策に対する選好という観点から明らかにする。そのうえで,政党や行政府といった政治的エリートとの関係,および,団体の政治的影響力や政策満足度について検討する。質問紙調査データから示される結果は次のようにまとめられる。団体の政策選好には,政府による保護志向と自由主義経済志向という異なる利益が併存している。そして,どちらの選好をもつ団体も与党や行政府といった政治的エリートの利益と一致していると認知している。もっとも,政府による保護を求める団体は政治的エリートへの働きかけを積極的に行うものの,政策満足度という点では十分な成果を得られていない。これに対して,自由主義経済志向の団体は積極的な働きかけを行っていないものの,政策に対して満足する傾向にある。
  • 忖度と自己規制はどこから生まれたのか
    桶田 敦
    2019 年 35 巻 1 号 p. 103-115
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    2012年末,安倍晋三首相が第2次安倍内閣をスタートさせた。国会での数の力と「アベノミクス」による高い内閣支持率を背景に,特定秘密保護法や安全保障法制など,タカ派的政治姿勢を前面に打ち出した。その一方で,安倍内閣のメディア対策に,組織メディアや多くの組織ジャーナリストたちは萎縮し,やがて,政権への忖度や自己規制が台頭してきた。本論では,組織メディアの忖度を安倍政権との関係で論じ,メディア側の自己規制の背景の一因を考察した。政権の中枢への忖度,あるいは報道の自己規制が顕在化してきた背景には,安倍内閣によるアメとムチのメディア戦略があることが改めて確認された。
  • Data from a Survey of Voters in Jalalabad City
    Nisar Ahamad Muslih, 山田 恭平
    2019 年 35 巻 1 号 p. 116-128
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    This article focuses on illegally-obtained voter ID cards in Afghanistan. Anecdotal evidence suggests that some voters obtain more than one ID card and use them in elections, which violates election law. We examine whether voters actually possess multiple ID cards, characteristics of the voters who obtain multiple cards, and whether and to what extent those who hold multiple cards use their cards in elections to vote multiple times. To achieve these goals, we conducted an original survey of 300 voters in Jalalabad City in Nangarhar Province. We find that (1) approximately 19% of the respondents hold two or more voter ID cards; (2) multiple card holders tend to be less educated; and (3) more than 50% of those who hold multiple cards voted multiple times in the first and second rounds of the 2014 presidential election.
  • 2019 年 35 巻 1 号 p. 131-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
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