第二次安倍政権成立以降,国会,官僚機構,野党に対して,また与党内部でも,首相の優位が際立った。それは,1990年代以降の一連の制度改革と安倍政権下の選挙が生み出した政治的条件の帰結である。本稿では,首相の優位がとくに際立った2017年の衆議院解散総選挙と臨時国会召集の問題をとりあげ,首相の優位に対する抑制・均衡のメカニズムについて検討する。日本国憲法は統治機構に関する規定が簡略な,テクストの余白が広い憲法である。裁量的権限を規制するためには,憲法テクストと適用をつなぐものとして,政治的アクターの合意によって形成されるルール(習律あるいは政治法)が重要な意味をもつ。このような視点から,内閣(実質的には首相)による裁量的な解散権行使に対する習律による制約の可能性について,検討する。野党による臨時国会召集要求に内閣が応じないという問題をめぐっては,法律によるルール化と合理的な慣行の必要性を論じる。