選挙研究
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36 巻, 2 号
選挙研究
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 集合行為アプローチの観点から
    砂原 庸介
    2020 年 36 巻 2 号 p. 9-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,政府間関係の議論として,地方政府間関係に焦点を当てる。欧米で蓄積されてきた地方政府間の連携についての先行研究を参考にしながら,「なぜ地方政府が他の地方政府と連携を行うか」について,地方政府間の集合行為に注目した説明を行う。次に,日本において地方政府内の対立・地方政府間の競合・国と地方の関係という三つの点について規定する政治制度から,日本における地方政府間関係の特徴について整理する。それを踏まえて,集合行為に注目した説明が,地方政府間の競争を基調として,国が必要に応じて合併を促すという,これまでの実証的な分析が示してきた特徴について整合的に説明できることを示す。さらに地方分権改革以降国と地方の関係が変わる中で,これまでの政治制度の特徴を考慮すれば,今後は都市の中心をめぐる競争と近年の住民投票による民意の表出が制度の議論にとって重要な論点になることを論じる。
  • 河村 和徳
    2020 年 36 巻 2 号 p. 25-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,地方議員のなり手不足は深刻化しており,2019年統一地方選は,それが重要な政治争点であることを明らかにした。本稿では,総務省が立ち上げた研究会の議論の動向やNHKが実施した地方議員に対する悉皆調査の結果を踏まえ,この問題を議論する。総務省の研究会は,地方議員のなり手不足に多様な要因があることを指摘するが,それらの中で最も重要なものは,「地方議員の待遇の悪さ」と「個人の選挙資源に依存する選挙環境」である。町村レベルでは,過去の経緯などから議員報酬の基準が低く抑えられており,自前主義の選挙環境や近年の政治情勢の影響を受け,候補者の発掘は困難な状況にある。これを克服する上で有効なのは「政党中心の選挙への転換」であるが,これに対して警戒感を持つ地方議員は少なくなく,地方議員のなり手不足の解決は一筋縄ではいかないことが指摘できる。
  • 久保 慶明
    2020 年 36 巻 2 号 p. 53-67
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,地方政治に関わるエリートの地域格差に対する認知,格差是正をめぐる争点態度,それらに応じたネットワークの相互関係を記述する。第一に,現代日本では地域格差があると認知するエリートが多く,その認知は政治参加の機会より結果の格差を感じる人ほど強い。ただし,首長や保守政治家の格差認知は相対的に弱い。第二に,中央の行政官僚に比べて政治家は,国政でも地方でも格差是正に積極的である。ただし,機会格差をめぐる党派的対立と結果格差をめぐる中央地方間の対立が存在する。第三に,エリートの接触パターンは,地域格差全体の是正に消極的な与党ネットワーク,機会格差の是正に積極的な野党ネットワーク,結果格差の是正に積極的な地方ネットワークの3つに整理できる。第四に,格差是正をめぐる争点態度は格差認知に規定される。ただし,結果格差をめぐる争点態度は財政規律の影響を受けている。
  • 委員会発言の量的テキスト分析を中心に
    芦谷 圭祐
    2020 年 36 巻 2 号 p. 68-79
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    地方議員は議会でどのような争点を取り上げているのだろうか。本稿は,量的テキスト分析を用いて,10万件を超える大規模なテキストデータを機械的に解析することにより,地方議員の代表活動の特徴を量的に明らかにする。具体的には,五大市の議会常任委員会における常任委員の全発言に対して,構造的トピックモデルを用いた分析を実施する。明らかになったのは,以下の通りである。第一に,特別に有権者や議員の関心が高い争点を除けば,議員は概ね有権者の関心の高い争点を議会で取り上げている。第二に,争点ごとに積極的に言及する議員は異なっている。女性議員など,特定の属性の議員が取り上げやすい争点もあれば,特定の政党が一体的に取り上げている争点もある。以上の結果からは,議会が多様な属性を有する議員によって構成されるようになると,議会討論もより多様な争点に及ぶものになることが示唆される。
  • 安倍政権下の選挙と憲法
    只野 雅人
    2020 年 36 巻 2 号 p. 80-91
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    第二次安倍政権成立以降,国会,官僚機構,野党に対して,また与党内部でも,首相の優位が際立った。それは,1990年代以降の一連の制度改革と安倍政権下の選挙が生み出した政治的条件の帰結である。本稿では,首相の優位がとくに際立った2017年の衆議院解散総選挙と臨時国会召集の問題をとりあげ,首相の優位に対する抑制・均衡のメカニズムについて検討する。日本国憲法は統治機構に関する規定が簡略な,テクストの余白が広い憲法である。裁量的権限を規制するためには,憲法テクストと適用をつなぐものとして,政治的アクターの合意によって形成されるルール(習律あるいは政治法)が重要な意味をもつ。このような視点から,内閣(実質的には首相)による裁量的な解散権行使に対する習律による制約の可能性について,検討する。野党による臨時国会召集要求に内閣が応じないという問題をめぐっては,法律によるルール化と合理的な慣行の必要性を論じる。
  • 森 裕城, 益田 高成
    2020 年 36 巻 2 号 p. 92-107
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は2017年10月に実施された衆議院議員総選挙の得票分析の結果をまとめたものである。投票率,無効票率,候補者数,当選者数,絶対得票率,惜敗率といった基礎的な指標を体系的に整理し,過去の選挙に共通する安定的な得票形態と2017年総選挙に特有の得票形態がどのように混在しているか,政党間・政党内で発生している重層的な競合がどのようなものであったかを明らかにした。なお,この選挙では,解散から投票に至るまでの過程が選挙結果に大きな影響を与えたと考えられるので,各政党のリーダーたちがどのような思考に基づいて選挙戦を展開したかについても,データの解釈に必要な範囲で叙述した。近時,小選挙区比例代表並立制におけるひとつの選挙戦術として,中小規模の政党による選挙区の「すみ分け」が評価されつつあるが,その政治的文脈についても検討を加えた。
  • 都道府県の経済状況と安倍内閣下の衆議院選挙結果の分析
    清水 直樹
    2020 年 36 巻 2 号 p. 108-125
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は,都道府県の経済データと2012,2014,2017年の衆議院選挙データを分析し,経済が選挙結果に与える影響を明らかにすることである。日本の経済投票に関する先行研究は,サーベイ・データによる研究が中心で,集計データによる研究が少ない。その理由として,第1に,時系列データの場合,選挙ごとに異なる政治状況や経済状況の影響を除去できないこと,第2に,地域間のクロスセッション・データの場合,地域特性や候補者特性の影響を除去できないことが挙げられる。本稿では,安倍内閣の下で実施された衆議院選挙のデータを利用し,その選挙に出馬している同じ候補者の得票率の差を計算したデータを用いることで政治状況や候補者特性などを除去する。そして,このデータを用いて,経済が選挙結果に与える影響を分析する。分析の結果,経済が選挙結果に与える影響は,かなり限定されたものであると結論付ける。
  • 千葉 涼
    2020 年 36 巻 2 号 p. 126-138
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    安倍政権下において,政府はマスメディアとの対決姿勢をより鮮明にしている。またマスメディアの側では,受け手の減少が続いている状況がある。こうした状況を背景として,マスメディアの報道が党派性を強め,多様な意見や情報に触れる機会を提供するというフォーラム機能が失われることが懸念される。このような観点から,本稿では全国紙の政治報道を対象に,安倍政権下でどのような論点が取り上げられたか,またそれらの報道はどのようなトーンを帯びていたかを分析した。その結果,第2次政権以降に多様な政策争点が論じられるようになったこと,そしてそれと並行して新聞間におけるポジティブ・ネガティブなトーンの差異が大きくなっていたことが明らかになった。この結果から,これまでマスメディアが担っているとされてきた多様な情報に触れる場をどのように設けるかが今後の課題であることが示された。
  • 重村 壮平, Jaehyun SONG, 矢内 勇生
    2020 年 36 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    We investigate how political elites shape public opinion. The literature of opinion leadership has paid considerable attention to how politicians influence their constituents’ policy preferences. Some show that elites can shift their supporters’ positions by merely announcing the elites’ positions. Others assert that politicians’ position - taking does not change voters’ positions, but that they can persuade voters to believe that the proposed policies are beneficial. By analyzing an original data set from a survey experiment in Japan, we reveal when the government succeeds in shaping public opinion and when it fails. Combining randomized framing and a conjoint experiment, we find that persuasion works when the prime minister provides ideologically well - aligned justification. Moreover, the persuasion effect is attenuated when the persuader takes an ideologically contradictory position. Our study highlights the influence of Prime Minister Shinzo Abe and contributes to a better understanding of political communication between elites and voters.
  • イデオロギーと政策選好の関係に情報環境が与える影響の実験的検証
    加藤 言人, 安中 進
    2020 年 36 巻 2 号 p. 151-167
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    特定の政策において,日本で「左派」や「右派」と呼ばれる政党やその支持者は,欧米における左派や右派とは逆の「ねじれ」た選好を持つことが指摘されてきた。特に金融緩和政策では,緩和拡大に対し,欧米では左派が右派に比べて積極的な傾向がある一方で,日本では左派が反対する動きが根強い。この要因に関しては様々な議論があるが,経験的な検証は行われていない。本稿では日本の有権者を対象にサーベイ実験を行い,情報環境の側面からイデオロギーと金融緩和選好の関係を規定する要因を探る。実験では,特に貧困削減フレームと経済学者の賛成意見が同時に提示された条件下で,左派が右派と同程度かそれ以上に金融緩和を支持する傾向が見られた。結果は,日本におけるイデオロギーと政策選好の関係が欧米とは異なる背景について,情報環境が重要な役割を果たしていることを示唆している。
  • 淺野 良成
    2020 年 36 巻 2 号 p. 168-181
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    有権者が重視する争点は何か。これは選挙のたびに話題になる問いである。しかし,各世論調査の重視争点を尋ねた質問はワーディングが統一されておらず,操作化される概念も異なる可能性がある。本稿では,3種類の質問文をランダムに示す実験を行い,争点投票の成立条件を満たすような,意見保有を伴う重視争点が回答されるかを比較した。その結果,単に「あなたにとって重要な争点」や「日本にとって重要な争点」を聞くと,明確な意見を必ずしも持たない争点が選ばれていた。一方,質問文で明示的に「投票先を決める際に重視する争点」を聞いた場合にのみ,外交・安全保障問題における意見の明確性と重視度が相関していた。また,経済や社会保障は質問文に依らず,意見の明確性と重視度の相関が見られなかった。以上から,重視争点の意味は質問文のワーディングや争点の種類によって異なることが示唆される。
  • 2020 年 36 巻 2 号 p. 182-200
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 三船 毅
    2020 年 36 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
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