2021 年 63 巻 3 号 p. 267-271
ドイツは2020年7月,石炭・褐炭火力発電所を2038年までに廃止する法案を可決した。同国は現在,再生可能エネルギー中心へエネルギー転換を進めているが,2022年までの脱原子力を進める中,電力供給の中核を担ってきた石炭・褐炭火力も廃止して,同国の今後の電力安定供給に問題が生じないかが,大きな焦点となってきた。本稿では,そうした同国の電力安定供給の行方について検証した。その結果,発電設備増強の行き詰まり,信頼性の乏しい風力発電,見通しの立たない長期電力貯蔵,国際連系線の限界,など,多くの課題のあることが明らかになった。最近では,脱原子力,脱石炭の順序をドイツは間違えたのではないかとの指摘も一部にみられる。