抄録
原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)はその大部分が副甲状腺の1腺腫大の腺腫で,多腺腫大の過形成,稀な副甲状腺癌も原因となる。いずれの病態においても病的副甲状腺の摘出術(PTX)が第一選択となるが,血液検査の普及に伴い,線維性骨炎や腎結石を繰り返す症候性PHPTは減少し無症候性PHPTの頻度が増加してきている。無症候性PHPTの手術適応については議論の余地があるが,米国NIHガイドライン2008に準じることが多い。本年2月シナカルセトが外科的切除不能なPHPT,副甲状腺癌による高カルシウム血症に対して適応拡大となった。これらの疾患は比較的稀であるが,現在他に有効な治療法がないためこれらの患者にとっては福音となる。但しPHPTの治療の第一選択はあくまでPTXであり手術可能な症例に対してむやみにシナカルセトを使用することは厳に慎むべきである。