抄録
悪性腫瘍に対する薬物療法は,分子標的薬を軸とした戦略に急速に移行しつつある。進行再発甲状腺癌も例外ではなく,本邦でも2014年にソラフェニブが放射性ヨウ素治療抵抗性分化癌に対して保険収載され,進行再発甲状腺癌の治療も大きな転換点を迎えている。しかし,分化癌の放射性ヨウ素治療抵抗性の判断も含め,分子標的薬を「どのような症例」に,「いつから」導入するべきかの判断には,慎重であるべきと考えられる。患者に最大の利益を提供するためにも,甲状腺癌のbiologyを熟知した上での適応患者の選択と,治療によるbenefitとharmを十分に考慮した分子標的薬の適正使用が肝要である。また,放射性ヨウ素治療を適切に行うためには,適切な手術が施行されていることが大前提であり,甲状腺外科専門医の果たすべき役割は重要である。一方,進行甲状腺分化癌の治療では,腫瘍の局所での進行や未分化転化する可能性を念頭に治療を行うことも必要であり,診療にあたるチームが協力して,新規治療薬を「適切」な症例に「安全」に使用し,エビデンスを構築していくことが必要と考えられる。