副甲状腺疾患に対する画像診断としては,副甲状腺腺腫や過形成の検索を目的とする超音波検査や核医学検査が用いられる。核医学検査では99mTc-MIBIを投与して,頸胸部の早期像と後期像を撮像するシンチグラフィが中心となり,複合型SPECT/CT装置の普及に伴い,形態画像と代謝画像を重ね合わせて診断する機会が増えている。放射性薬剤としてFDGを投与し,糖代謝の亢進をPET/CTによって可視化する画像診断法が悪性腫瘍に対する画像診断としてこの10年で広く普及したが,副甲状腺腺腫・過形成検索目的には十分な感度を有していない。一方で,アミノ酸代謝の亢進を画像化するメチオニン-PET検査の診断精度に関する報告は多い。99mTc-MIBIを用いた通常のシンチグラフィで結論が出ない場合のオプションとして,今後はメチオニンやコリンなどを検査薬としたPET/CTが考慮されるものと期待される。
副甲状腺機能亢進症は,副甲状腺ホルモンの分泌過剰により,高カルシウム血症を引き起こす疾患である。根治のためには責任病巣である副甲状腺腺腫/過形成を同定し,切除することが基本となるため,治療方針を決定する上で画像診断はきわめて重要である。責任病巣を検索する目的で用いられる画像診断法には,簡便でベッドサイドでも施行できる超音波検査,CTやMRIなどの形態学的画像診断法のほか,放射性同位元素で標識した薬剤を投与し,その集積状況で病変を同定する核医学的画像診断法も臨床的に重要である。
核医学検査で使用される放射性薬剤は2つに大別される。すなわち,1回の崩壊で1本のγ線を放出する単一光子放出核種で標識されたSPECT(single photon emission computed tomography)製剤,および原子核から陽電子(ポジトロン)が放出され,近傍の電子と衝突して2本のγ線(消滅放射線)が出るポジトロン核種で標識されたPET(positron emission tomography)製剤である。副甲状腺腺腫の検索には,前者として99mTc-MIBI(methoxyisobutylisonitrile)を用いた二相性シンチグラフィが日常診療で行われており,201Tlと99mTc(あるいは123I)の2核種を用いたサブトラクション法が用いられることもある。一方のPET検査は悪性疾患に適応のあるフルオロデオキシグルコース(fluorodeoxyglucose,FDG)が検査薬として広く用いられるが,副甲状腺腺腫の検索には満足な成績が得られていない。以前より報告が多いのは,アミノ酸製剤である11C-メチオニンを用いたPET検査である。ただし,2015年春の時点で11C-メチオニンを用いたPET検査は保険適用となっていない。
本稿では,副甲状腺疾患における核医学検査として従来行われているSPECT検査,続いてPET検査について解説する。
1989年にCoakleyらによって99mTc-MIBIを用いた副甲状腺腫の画像化が報告された[1]。本薬剤は心筋血流を評価する際に用いられる製剤と同じもので,2011年に副甲状腺腺腫検索の目的でも使用できるよう保険適用が拡大されている。
検査では,約740MBq(20mCi)の99mTc-MIBIを静脈内投与し,15分後に早期像,2~3時間後に後期像として頸胸部の前面像を撮像する。正常甲状腺への99mTc-MIBIの集積は静注約5分後にピークに達するが,その後洗い出され,後期像では甲状腺の形態が不明瞭化する。正常副甲状腺は小さいために通常は描出されないが,多くの副甲状腺腺腫では薬剤の洗い出しが甲状腺より遅く,後期像にて集積残存部位として描出される(図1)。甲状腺濾胞腺腫や多結節性甲状腺腫における結節,甲状腺乳頭癌にも後期相で集積が残存することがあり注意を要する。縦隔内に異所性副甲状腺腺腫を認めることがあるため(図2),撮像範囲としては頸部のみならず縦隔を含めて撮像する。平面像(前面像)のみならず,断層像であるSPECT像を追加撮像することによって,病変が同定しやすくなるとともに[2],病変の立体的な位置が把握しやすくなる。近年,X線CTと一体化した複合型SPECT/CT装置が普及しており,CTで得られる形態情報とSPECT撮像で得られた代謝画像を融合させて診断することができるようになった(図3)。二相性の撮像にSPECT/CTを用いることで診断精度が向上し[3],また形態の裏付けとともに集積が解釈できるため,実臨床上では確信度の向上にも役立つ。

99mTc-MIBIを用いた二相性副甲状腺シンチグラフィ。99mTc-MIBI投与15分後の早期像(a)と約3時間後の後期像(b)を示す。早期像では甲状腺右葉下極付近の副甲状腺腺腫(a:矢印)とともに甲状腺両葉が描出されているが(a:矢頭),後期像では副甲状腺のみが描出されている(b:矢印)。切除にて副甲状腺腺腫であることが組織学的に確認された。耳下腺(PG),顎下腺(SG),心筋(M),肝臓(L)などにMIBIの生理的な集積がみられる。

縦隔内異所性副甲状腺腺腫のCT像とMIBI-SPECT像。左主気管支腹側の結節に一致して(白矢印),MIBIの限局性集積がみられる(黒矢印)。縦隔鏡下に病巣を摘出し,副甲状腺組織であることが確認された。

99mTc-MIBIを用いた二相性副甲状腺シンチグラフィの後期像のSPECT/CT像(図1と同一症例)。右下腺の副甲状腺腺腫に対するMIBIの集積を(矢印),形態の裏付けとともに把握することができる。
1価の陽イオンである201Tlは,Na-K ATPaseの活性が高く,血流が豊富な組織に取り込まれるため,正常の甲状腺組織および副甲状腺腺腫の双方に集積する。一方の99mTc-pertechnetate(あるいは123I)は甲状腺組織のみに分布する。201Tlの集積から99mTc-pertechnetate(あるいは123I)の集積をワークステーション上で引き算することにより,副甲状腺腫を描出できる(図4)。本手法は,Ferlinらにより1983年に報告された[4]。

201Tl-chlorideと99mTc-pertechnetateを用いたサブトラクション法による副甲状腺腺腫の描出。201Tl-chlorideの前面像(左上),と99mTc-pertechnetateの前面像(右上),201Tlの集積から99mTcの集積を引き算した画像(左下),病変部レベルの造影CT横断像(右下)を示す。サブトラクションにより,甲状腺右葉の背側にみられる結節(白矢印)に一致して,限局性の集積を認め(黒矢印),切除の結果副甲状腺腺腫であることが証明された。なお,甲状腺左葉は切除されているため,201Tlおよび99mTc-pertechnetateの集積がみられない。
検査では,74~111MBq(2~3mCi)の201Tl-chlorideを静脈内に投与,5~10分後より前頸部を撮像する。201Tl-chlorideは血管親和性が高く,静脈への付着により血管構造が描出されやすい。この集積が病変部位と重なって診断の妨げにならないよう,薬剤投与後には生理用食塩水で十分に洗い流す必要がある。また鎖骨下静脈の描出を避けるために,静脈内投与には上肢の静脈から行わず,足背静脈など下肢の静脈から投与する施設もある。続いて,185MBq(5mCi)の99mTc-pertechnetateを静注し,10~15分後より前頸部の撮像を行い,ワークステーション上で201Tlの集積画像から99mTc-pertechnetateの集積画像のサブトラクション像を得る。甲状腺のみを描出する薬剤として,99mTc-pertechnetateの代わりに7.4~11.1MBq(0.2~0.3mCi)の123I(ヨードカプセル)の内服が用いられることもあるが,99mTc-pertechnetateは,①99Mo/99mTcジェネレーター(ウルトラテクネカウ)を有する施設で容易に入手できる,②検査に要する総時間が短縮される(ヨードカプセル-123を内服した場合には,3~5時間後に撮像),③検査前のヨード制限が不要である,などの長所を有する。なお,2核種を用いるサブトラクション法は,2種類の放射性薬剤を用いるため煩雑であること,1回目の撮像の開始時から2回の撮像終了時まで,体動があると不十分な検査となってしまうことなどの問題点もあり,副甲状腺腫検索に対する99mTc-MIBIシンチグラフィの保険適用が得られた現在,臨床での頻度は以前より減少している。
サブトラクション法やMIBIによる二相撮像法の診断成績は報告によってまちまちであるが,一般には1gを超えた副甲状腺腫ではいずれも100%に近い検出率,0.5gではタリウムで5割程度,MIBIで7割程度の検出率を有するとされる。両者は相補的な役割を有し,両検査を組み合わせることで正診率が向上したという報告がある[5]。
腫瘍性疾患を対象として臨床のPET検査でもっとも用いられている放射性薬剤はフッ素-18で標識したFDG(fluorodeoxyglucose)である。FDGは糖代謝の亢進を画像化する放射性薬剤であり,2010年春以降,悪性腫瘍の転移・再発巣の検索が保険適用となっている。副甲状腺機能亢進症における副甲状腺腺腫/過形成の検索においては,糖代謝がそれほど亢進していない病変が対象となることが多く,FDGの有用性は確立されていない。一方,アミノ酸代謝の亢進を画像化する炭素-11標識のメチオニン(MET)を投与し,PET像を得ることで副甲状腺腺腫を検索する試みが行われており,多数の報告がみられる。メチオニンを標識するポジトロン核種の炭素-11は,半減期が20分ときわめて短く,FDGのような商用供給は不可能と考えられる。このためサイクロトロンや合成装置を有する検査施設にて,検査薬は検査前に自家合成しなければならない。
MET-PET検査では,370~740MBq(10~20mCi)の11C-メチオニンを静注し,15~30分後の安静待機の後に頸胸部を撮像する。撮像装置として,PET単独装置を置き換えるように複合型PET/CT装置が普及したため,CTによる形態情報をあわせて評価することができる。図5に副甲状腺腺腫症例,図6に過形成症例を示す。

MET-PET/CTの横断像(上段)と冠状断像(下段)。甲状腺右葉背側にみられる小結節に一致してMETの点状集積を認め(矢印),副甲状腺腺腫が疑われる。切除にて組織学的に確認されている(図1と同一症例)。

副甲状腺過形成のMET-PET/CT像。USでは径5mm大の結節を認め(白矢印),同部位に一致してMETの軽度の集積がみられる(黒矢印)。切除にて副甲状腺過形成が証明された。MIBIシンチグラフィの前面像では,同部位に有意な集積亢進を指摘できない。
原発性副甲状腺亢進症にて副甲状腺腺腫切除術の術前患者を対象にMET-PET検査を行った102例の検討では,単発腺腫を有する97人に対する感度が91%,多腺病変を有する5人に対する感度が80%,偽陰性病変は小病変,あるいは軽い病変である傾向にあったと報告されている[6]。原発性に限定しない副甲状腺腺腫疑い症例に対して施行されたMET-PET(/CT)検査の診断精度について,9文献,計258患者をまとめたメタアナリシスによれば,患者単位の感度は81%と報告されている[7]。ではMIBI-SPECTと比較した場合のMET-PETの診断精度はどうか。副甲状腺機能亢進症患者に対してMET-PET検査とMIBIによる二相撮像法を比較し,腺腫症例(癌を含む)の感度はそれぞれ94%,50%,過形成病変に対する感度はそれぞれ69%,47%で,MET-PETが優位な傾向にあった[8],またMIBI検査などその他の画像診断法で陽性に描出されなかった副甲状腺腫がメチオニンPET検査にて感度83%で描出できた[9]など,MET-PET検査の優位性を論じた報告がみられる一方で,原発性,二次性を含めた副甲状腺機能亢進症の検討にて,MET-PET検査の病変別の感度は54%と決して満足できるものではなく,MIBIの二相撮像を行ったSPECTや超音波検査よりもむしろ劣っていたとする報告もある[10]。さらに副甲状腺腺腫の術後に機能亢進症が遷延する患者21人の再手術前に(ⅰ)サブトラクション法,(ⅱ)MIBI-SPECT(/CT),(ⅲ)MET-PET/CT,(ⅳ)選択的静脈サンプリングの4つの手法を比較したところ,17人で病変が組織学的に確認され,各検査の正診率は左右の同定でそれぞれ59%,19%,65%,40%,上下左右の同定ではそれぞれ48%,14%,61%,25%であり,サブトラクション法,MET-PET/CTが有用だったのに対して,MIBI-SPECT/CT,静脈サンプリング法では有用性が低かったとする報告もある[11]。当施設の23人の検討では,14人でMET-PET/CT,MIBI-SPECT/CTが同じ結果を示したがMET陽性/MIBI陰性が5人,逆にMET陰性/MIBI陽性が4人にみられた[12]。これらの結果から,臨床的にはまず二相性のMIBI-SPECT(可能であればSPECT/CT)検査を行い,結論が出ない場合にサブトラクション法やMET-PET/CTを検討するのが現実的であろうと考えている。
MET以外のPET製剤としては,副甲状腺腺腫検索にFDGとMETの診断精度を比較したものがある。43患者,47組の2検査の比較において,MET陽性22症例のうち,FDGが陽性であったのは10症例に過ぎず,逆にFDG陽性/MET陰性は1例のみだったとされ,FDGの有用性が低いことが確認されている[13]。副甲状腺腫検索において,メチオニン以外のPET製剤として近年報告がみられるのが,フッ素-18あるいは炭素-11で標識したコリンである。本PET製剤は前立腺癌の検索で盛んに臨床研究が行われてきたが,副甲状腺腫も陽性描画できることが知られる。Lezaicらは,24人の原発性副甲状腺機能亢進症患者の術前局在診断にて,MIBI-SPECT/CTの感度が49%であったのに対し,18F-fruorocholine-PET/CTの感度は92%と良好な初期データを報告した[14]。Michaudらは原発性8人,二次性4人の副甲状腺機能亢進症における局在診断で,患者ごとの感度が92%,腺腫に対する病変単位の感度は89%と,同様に良好な成績を報告している[15]。Oreviらは40人の原発性副甲状腺機能亢進症患者に炭素-11標識コリンによるPET/CTとMIBI-SPECT/CTを比較し,MIBIでは33人が陽性だったのに対して,コリンでは37人が陽性だったと,コリンPET/CTの優位性を報告している[16]。エビデンスの確立にはまだ時間を要するが,今後が期待されるPET製剤と考えられる。
以上,副甲状腺腫瘍に対して用いられるPET検査を含む核医学的画像診断法について解説した。副甲状腺腺腫検索では,当分の間MIBIを用いたSPECTあるいはSPECT/CT検査が臨床現場で盛んに用いられると予想される。一方でSPECT製剤を用いたシンチグラフィに比べると,PET検査で得られる画像は比較的鮮明で,定量性に富む長所を有する。C-11を製造するためのサイクロトロンや,比較的高価なPET/CT装置をすべての施設で導入することは不可能であり,メチオニンやコリンを用いたPET/CT検査が副甲状腺腺腫検索にてどの施設でも気軽にファーストステップとして施行することにはならないだろうが,MIBI-SPECT/CTで結論が出ない場合の次のステップとして,11C-メチオニンなどを用いたPET/CT検査が施行される機会が増えるものと推測される。