甲状腺外科領域において,医療安全対策の必要な問題点が多数ある。外来診療では待ち時間へのクレーム,甲状腺穿刺吸引細胞診では承諾書の必要性,施行後の出血や疼痛対策,CT検査などでは造影剤アレルギーの問診などが問題となる。医療訴訟の増加する現代では,手術適応の決定や説明義務(インフォームド・コンセント,自己決定権)に関して,カルテ記載の内容が重要となっている。手術合併症の中では,術後出血,不測の反回神経まひ,気管カニューレの事故抜去などに関するトラブル対応が重要である。マニュアル整備も必要であるが,危機管理で最も大事なことはスタッフの教育と人材育成であることを銘記する必要がある。