日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集2
「特集2.副腎腫瘍の周術期管理」によせて
酒井 英樹
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2016 年 33 巻 1 号 p. 22

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抄録

副腎腫瘍のうち手術の対象となるのは,自律的にホルモンを産生する機能性腫瘍と悪性あるいは悪性が疑われる腫瘍である。機能性副腎腫瘍の主なものはアルドステロン産生腺腫,サブクリニカルクッシング症候群を含むコルチゾール産生腺腫および褐色細胞腫であり,アンドロゲン産生腺腫は稀である。原発性アルドステロン症におけるアルドステロンの過剰分泌は高血圧や低カリウム血症の原因になる以外に,心血管や腎などの臓器障害を引き起こす可能性がある。クッシング症候群/サブクリニカルクッシング症候群では,コルチゾールの過剰分泌のため,肥満や高血圧あるいは耐糖能障害を生じる。褐色細胞腫ではカテコラミンの過剰分泌により高血圧をはじめとする循環器症状のほか,急激な血圧の変動による脳血管障害の危険もある。このような理由から自律的なホルモン産生能を有する機能性副腎腫瘍は,その大きさにかかわらず手術の適応と考えられる。機能性副腎腫瘍の多くは良性腫瘍であるが,手術前後でのホルモン濃度の急激な変化に伴う循環動態や生理機能の変化を熟知しておく必要がある。一方,副腎皮質癌は非常に稀な疾患ではあるが,術後の再発率は高く予後不良である。また,様々なホルモンを産生する可能性があり,個々の症例でその病態は複雑である。本特集では,原発性アルドステロン症,クッシング症候群/サブクリニカルクッシング症候群,褐色細胞腫および副腎皮質癌の外科治療におけるエキスパートに周術期管理について執筆していただいた。それぞれの疾患の術前・術中・術後管理だけでなく,疾患の病態,診断,治療に関しても簡潔にまとめられているので,これから内分泌外科医を目指す若手の医師にとって,副腎腫瘍診療の教科書としても役立つ内容となっている。本特集が合理的で安全な副腎手術の遂行に貢献できれば幸いである。

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