2016 年 33 巻 2 号 p. 89-96
膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)の患者数は疾患概念の普及と画像診断の進歩により年々増加傾向にあり,有症状患者だけでなく検診などで偶然見つかるケースも増えてきている。本邦でも膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドラインが発刊されNET診療に貢献されるものと期待される。NET診断において特に内視鏡検査は重要であり,消化管NET(GE-NET)における内視鏡検査では,質的診断だけではなく,内視鏡治療適応の可否の判断も必要となっている。膵NET(pNET)においてはCT,MRIなど他のmodalityで検出困難な病変も超音波内視鏡検査で検出することができるだけでなく,EUS-FNAによる質的診断も可能となり重要なmodalityとなっている。また,pNETはMEN1の部分症でもあることからpNETを見たらMEN1を疑うことが重要である。ガイドラインでは内視鏡検査の位置付けや所見,内視鏡治療の適応に関してアルゴリズムやClinical Question形式で記載されておりこれらを参考にし,より正確な診療を行うことが重要である。
神経内分泌腫瘍は神経内分泌細胞に由来する腫瘍の総称で,全身臓器に発生するが,中でも膵・消化管は好発部位である。WHOは2010年の改訂で神経内分泌腫瘍をNeuroendocrine neoplasms(NEN)と総称し,核分裂数やKi67指数により神経内分泌腫瘍(NETG1,G2)と神経内分泌癌(NEC)に大別した。近年,NET患者数は増加傾向にあり[1],本邦においても膵NETでは人口10万人当たりの新規発症数は2005年に1.01人であったのが2010年には1.27人,消化管NETでは2005年に2.10人であったのが2010年には3.51人と増加傾向[2,3]と報告されている。増加の要因として疾患概念の浸透と診断技術の向上が考えられる。海外では,以前よりNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)やEuropean Neuroendocrine Tumor Society(ENETS)からガイドラインが公表され均質化した診療に貢献してきた。本邦でも,2013年11月に日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)より膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドラインが公表され,2015年に出版された。本邦のガイドラインはNETの診断,病理,外科治療,内科治療・集学的治療,MEN1に伴う膵・消化管NETの5項目から成り立ち,それぞれの項目に関してClinical Question形式にて構成されている。診断技術においては,特に消化管内視鏡や超音波内視鏡(EUS)といった内視鏡機器の進歩だけでなく超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)の手技が確立,普及したことで組織診断能が向上したことも大きく貢献している。本稿ではNET診断時における重要な位置付けを占める内視鏡検査に関して本邦ガイドラインの内容を中心に解説する。
本邦において,GE-NETは人口10万人当たり6.42人の患者数で発生部位は前腸 26.1%,中腸 3.6%,後腸 70.3%と欧米と比べて中腸由来が少ない[3]。臓器別では,直腸 55.7%,十二指腸 16.7%,胃 15.1%の頻度となっている。GE-NETの患者の44%が検診で発見され[2],好発部位である直腸,胃,十二指腸は,上部消化管内視鏡検査(EGD)や下部消化管内視鏡検査(TCS)施行時に偶然発見されることも多く,また,内視鏡治療適応の判断も必要となるため,内視鏡所見に精通しておくことは重要である。ここでは,最初に共通するGE-NETの内視鏡所見を総論的に述べ,次に直腸,十二指腸,胃,そして,近年内視鏡検査が発達している小腸病変の特徴を述べる。
1.GE-NETの内視鏡的特徴GE-NETは粘膜深層にあるセロトニンを産生するenterochromaffin(EC)細胞が腫瘍化した上皮性腫瘍で,早期から粘膜下層に進展し膨張性発育を呈するため,典型的な内視鏡所見は類円形,表面平滑で正常粘膜に覆われた立ち上がりが比較的急峻な粘膜下腫瘍様の隆起性病変を呈し,色調は黄色調から正常色調である[4~6](図1b)。膨張性発育のため腫瘍が増大すると,腫瘍頂部にdelleと言われる中心陥凹や潰瘍形成を伴うことや,粘膜内血管が圧排され拡張血管として認識される(図1d)。

消化管NET(直腸)の内視鏡画像とEUS画像
a:消化管EUSの正常所見。
b:直腸NET G1。黄色調のSMT様隆起を認め,表面は拡張血管を認めた。
c:bのEUS(細径プローブ)画像。第2,3層に主座を置く低エコー腫瘤として描出された。腫瘍頂部に陥凹がなく,固有筋層への浸潤はないと判断しESDにて一括切除した。
d:直腸NET G2。発赤調のSMT様隆起頂部に深い陥凹や潰瘍を認めた。
e:dのEUS(専用機:ラジアル型)画像。第4層が断絶しており,筋層浸潤と診断し外科的切除を施行した。
GE-NETでは他の粘膜下腫瘍との鑑別だけではなく,腫瘍径が1cm以下で,かつ固有筋層への浸潤がない場合,内視鏡治療の適応が考慮されることから超音波内視鏡(EUS)を用いて腫瘍径と深達度の正確な診断を行うことが重要である。EUSは細径プローブと専用機に大別される。細径プローブは鉗子孔から挿入できるため,通常内視鏡観察時に同時に施行可能であり簡便である。しかし,有効画角が狭く,主に20MHzなどの高周波で観察するため,比較的大きな病変や丈の高い病変では深部減衰を生じてしまうため,比較的浅い病変を観察する際に用いる。一方,専用機は,主に7.5MHzなどの低周波で観察するため,深部減衰が少ないため深部病変やリンパ節転移の際にも使用可能である。専用機にはラジアル型とコンベックス型(あるいはリニア型)の2種類がある。ラジアル型は360°に渡り観察可能である一方で,EUS-FNA施行ができないというデメリットがある。コンベックス型は観察からFNAまで可能であるが,消化管壁の層構造を全体的に観察するには技術を要する。ラジアル型,コンベックス型それぞれに一長一短があり,各々の状況において使い分ける必要がある。通常,EUSで消化管を観察すると5層構造を呈する(図1a)。NETのEUS所見は第2~3層である粘膜層,粘膜下層に主座を置く境界明瞭な低エコー腫瘤として描出され,内部エコーは均一である(図1c)[7]。固有筋層への浸潤所見は,粘膜下層である第3層の断裂と固有筋層である第4層の肥厚である(図1e)。
2.直腸NETの特徴直腸NETは下部直腸に多く[8,9],リンパ節転移を認めると予後不良[10]と報告されている。直腸NETにおいて腫瘍径>1cm,表面に陥凹や潰瘍の存在,脈管侵襲陽性はリンパ節転移の危険因子である[9,11,12]。そのため,本邦では,腫瘍径1cm以下で,かつ内視鏡・EUSの所見から深達度が粘膜下層以浅の場合(図1b,c)リンパ節転移のリスクが低いため内視鏡的切除を先行し切除検体の病理組織学的検索にて固有筋層浸潤を認める,切除断端陽性,脈管侵襲陽性などの所見があればリンパ節郭清を含む外科的追加切除を検討する方針が一般的である(図1d,e)。
3.十二指腸NETの特徴十二指腸NETは,非機能性NETの割合が高く,散発性,高分化型(G1)であることが多い[13]。機能性NETではガストリノーマが60~75%と大部分を占め,そのうち50~90%にリンパ節転移を認めることから悪性度が高いと言われている[14]。ガストリノーマは十二指腸と膵で発生するが,最近では十二指腸における発生割合の方が高い(50~88%)[15](図2a,b)。十二指腸NETは球部に多く,下行脚,乳頭部の順である。特に球部前壁や幽門輪の肛門側すぐの位置に発生することが多い。内視鏡観察時には病変を見落とさないように注意が必要で,可能ならば反転操作が考慮される。十二指腸は壁が2mm程度と薄く,好発部位である球部はBrunner腺が豊富で,十二指腸内でも粘膜の伸縮性に乏しく,下行脚ではKerckring襞の隙間に沿って粘膜下層に局注液が拡散して膨隆が得られにくいなど他の消化管と比べて内視鏡治療の難易度が高い部位である。そのため,現状,エビデンスに乏しく標準的な切除術に関してコンセンサスが得られていない[16]。本邦ガイドラインでも研究段階としてという形で内視鏡治療適応病変を①腫瘍径1cm以下,②深達度がsmとし,内視的粘膜切除術(EMR)を推奨としている。

十二指腸,小腸,胃NET
a:MEN1におけるガストリノーマ。十二指腸に多発する粘膜下腫瘍が認められた。
b:aのEUS(コンベックス型)画像。多発する膵病変を認めた。
c:Rindi分類Ⅰ型胃NET。体中部前壁の隆起性病変。背景粘膜は萎縮していた。
d:近接像(5mm大)。
e:前庭部粘膜は萎縮を認めない。典型的なA型胃炎。
f:eのEUS(細径プローブ)画像。第2層由来の病変で3層は保たれていた。
g:小腸NET G1。DBE画像。周堤を伴う潰瘍性病変を認めた。
h:小腸造影。ガストロをはじく辺縁不整な隆起性病変を認めた。
i:造影CTにて空腸に動脈相にて濃染する腫瘤像を認めた。
胃NETに関してはRindiら[17]により高ガストリン血症の有無と背景疾患の有無により3型に分類されたRindi分類が汎用されている。TypeⅠ:萎縮性胃炎(A型胃炎)を背景とし発生するもので高ガストリン血症を伴う,TypeⅡ:MEN1(Zollinger-Ellison症候群)患者に発生し,高ガストリン血症を伴う,TypeⅢ:散発例で,高ガストリン血症を伴わないものである(表1)。TypeⅠ,TypeⅡでは胃底腺領域に1cm以下で多発することが多く,TypeⅡではMEN1由来の十二指腸病変にも注意する。TypeⅢは単発性で発見時1cm以上であることが多く,胃体部や前庭部に発生し悪性度が高い[17]と報告されている。TypeⅠ,TypeⅡでは悪性度は低いため腫瘍径1cm以下,個数が5個以下,深達度がsm以浅であれば内視鏡治療の適応となる(図2c-f)[18]。

胃NETのRindi分類
本邦では中腸NETの人口10万人当たりの患者数は0.23人と欧米に比べて少なく,小腸悪性腫瘍のうち,小腸カルチノイドの割合は1.3~1.7%である。診断時,腫瘍径が20mm以内であるが,肝転移やリンパ節転移を伴っていることが多い(図2g-i)。腫瘍径が10mm以下でリンパ節転移陽性率は約44%で,20mm以上では約85%にも達する[19]。回腸末端部 46.8%,回腸 41.8%,空腸 11.4%の順に多い[20]と報告されているが,小腸内に多発病変を認めることもあり全小腸を検索する必要がある。近年,カプセル内視鏡(CE)やバルーン内視鏡(BAE)により非侵襲的に全小腸検査が可能になり,CE・BAEにより小腸悪性腫瘍と診断した内のNETの割合はそれぞれ19.5%,14.8%と報告されている[21]。中でもBAEは生検,止血,拡張など処置ができその有用性は極めて高い。原因不明の消化管出血(OGIB)にてBAE施行例の7.7%がNETであったとの報告もある[22]。しかし,BAEはCEに比べて患者の負担が大きいことから,CEでスクリーニング施行し,精査でBAEを施行する施設が多い。
本邦におけるpNETの人口10万人当たりの患者数は2.69人で,内訳は非機能性pNET 65.5%,機能性pNET 34.5%である。機能性pNETの内訳はインスリノーマ 20.9%,ガストリノーマ 8.2%の順である[3]。インスリノーマの87%は良性で,90%は単発例で,84%は腫瘍径が<2cm[23]で膵臓内全体に病変が発生する[24]と報告されている(図3a-d)。インスリノーマの7~10%は転移性病変を有し,リンパ節や肝臓に転移することが多い[24]。本邦ガイドラインでは2cm以下で主膵管と病変との距離が3mm以上であれば核出術が可能としている[25]。ガストリノーマでは消化性潰瘍が9割以上の患者に認められ,1cm未満の単発性潰瘍が多い。ガストリノーマトライアングルという①胆囊管と総肝管合流部,②十二指腸第2部と第3部の移行点,③膵頭部と膵頸部の移行点の3点で囲まれた領域[26]に発生し,病変は多発することもある。画像診断におけるpNET検出率は,体外式USで80%程度であるがEUSを併用することで92%まで向上するとされ[27],また,multidetector - row CTで検出困難であったpNETの91%がEUSにて検出可能であった[27]と報告され,pNET診断におけるEUSは必須のmodalityである。pNETは浸潤性膵管癌と異なり,主膵管の拡張や途絶などの二次性変化が少なく,機能性pNETでは,病変が多発することや,EUS以外のmodalityで検出困難であった微小病変を認める場合もあるため膵野を含めて膵臓全体を詳細に観察することが大切である。典型的なpNETは線維性被膜に囲まれた境界明瞭な内部は間質や線維成分が比較的少ない髄様な腫瘤で,毛細血管成分に富むため多血性充実性腫瘍である。また,腫瘍は膨張性発育を呈する。EUS像では病理学的特徴を反映し,類円形の境界明瞭で辺縁整な腫瘤で内部は均一な低エコーとして描出される(図4a,b)。pNETの非典型的な画像所見の中で乏血性を示す腫瘍の場合,悪性度が高いために注意が必要である。Vascularityが低いほど悪性度は高い[28]と報告され,このような場合,腫瘍は明らかな被膜を持たず浸潤性発育を示し,周囲との境界は不明瞭で膵癌と類似した画像所見を認め,組織学的には腫瘍内に線維性間質の増生が目立つ(図5a,b)。

機能性pNET(インスリノーマ Grade1)
a:造影CT。膵尾部に明らかな病変は指摘できなかった。
b:aのMRI画像。膵尾部にT2強調画像にて高信号を呈する腫瘤を認めた。
c:aのEUS(コンベックス型)画像。膵尾部に6.7mmの類円形,境界が一部不明瞭,辺縁整な腫瘤で内部は均一な低エコーを呈した。
d:cの造影EUS(ソナゾイド®)画像。濃染される腫瘤として描出された。病変に対して膵体尾部切除施行され,核分裂像が1/10HPSにてGrade1と診断した。

非機能性pNET Grade1
a:造影CT。膵尾部に動脈相で濃染する腫瘤像を認めた。
b:aのEUS(コンベックス型)画像。膵尾部に10.4mmの類円形,境界明瞭で辺縁整な腫瘤で内部は均一な低エコーを呈した。
c:EUS-FNA施行してKi-67<2%にてG1と診断した。

非典型的なpNET画像
a:造影CT。膵体部に動脈相で造影効果の乏しい腫瘤を認め,肝臓に転移性病変を認めた。
b:aのEUS(コンベックス型)画像。膵体部に30mm大の境界が一部不明瞭で辺縁が不整な腫瘤として描出され,内部に石灰化を認めた。EUS-FNA施行してKi-67 10%にてGrade 2と診断した。
pNET診断におけるEUSの担う役割として,EUS-FNAにおける組織診断,悪性度診断も重要である(図4c)。EUS-FNAによるpNETの診断の感度は82.6%~93%[29]とその有用性が報告され,診断不能のfactorは,膵頭部病変および線維化が>30%のNETとされている[30]。悪性度診断に関してEUS-FNA診断と切除検体診断との一致率は77.8%[31]と報告されている。不一致の要因はKi67の腫瘍内不均一性であり,EUS-FNAにて悪性度診断能を上げるにはENETSが推奨している2,000個以上の腫瘍細胞をEUS-FNAでも採取することが推奨される[31]。EUSは画像診断,組織診断に有用であるが,機能性NET,中でもインスリノーマやガストリノーマはEUSでも検出困難な小病変を呈することがあるため,診断時にはSASI(SACI)テストを行い局在診断に注意しなければならない。また,近年,NET-G3の概念も注目されており,WHO2010年分類のNECの中から,真のNECとNET-G3に分けて治療方針を決定するためにもEUS-FNAは重要である[32]。
pNETの約10%は(多発性内分泌腫瘍症1型:MEN1)の部分症である。本邦におけるMEN1由来のpNETの内訳は非機能性NET,ガストリノーマ,インスリノーマの順に多く,それぞれ29%,29%,22%を占める。中でもガストリノーマは,膵だけではなく十二指腸病変も認めるのでEGDによる確認は必須である。MEN1患者では74%に多発腫瘍を認めるので注意が必要である[33]。また,MEN1関連腫瘍の中でpNETの死亡リスクは特に高く[34],本邦でもpNET関連死が71%を占める[35]。そのため,pNETを見た場合にはMEN1を必ず疑い,病変が多発していないか注意することが重要である。以上のようにpNETを見た場合は,常に“イ・タ・コ”(イ:遺伝(MEN1型),タ:多発,コ:小型)を念頭に検査を施行することを推奨している[36]。
本稿では膵・消化管神経内分泌腫瘍における内視鏡検査に関して本邦ガイドラインの内容に即しながら解説した。膵・消化管神経内分泌腫瘍診療に内視鏡検査は診断だけでなく治療方針決定にも重要であり必須の検査である。現在,JNETSの悉皆登録で症例集積がなされており更なるエビデンスの構築によりガイドラインがより良いものに改訂されていくことが期待される。