日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
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特集2
クリニック診療の女性外科医:内分泌・甲状腺外科専門医を持つ女性外科医としてのつよみ
川真田 明子鈴木 留美飯原 雅季
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2018 年 35 巻 2 号 p. 116-119

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抄録

私は卒業後に長く外科医を続けたいという思いから大学病院の内分泌外科に入局し,その後13年間内分泌外科の経験を積み,現在のクリニックに勤務している。

内分泌・甲状腺外科専門医を持つ女性外科医としてのクリニック診療での強みを述べる。クリニックの受診者は,大学病院と比べて自身の症状により受診することが多くその症状は女性特有の症状である場合がある。また不妊治療に関連した受診者もおり,同性の立場からのサポートが求められている。また,当院では連携病院との手術体制を構築し,われわれの持つ専門外科医としての技術を提供するため連携病院にて当院手術チームにより手術を行っている。この体制により,われわれは最低限の時間拘束で専門的な手術治療の提供が可能であり,クリニック診療に集中することもできる。クリニックの業務や連携病院との体制を工夫すればクリニック勤務でも女性外科医としてのキャリアを継続してゆくことができる。

はじめに

現在日本では,「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しており,国の政策としてのいわゆる「働き方改革」がいわれている[]。この中には,女性が活躍しやすい環境整備などの項目が盛り込まれている。妊娠,出産のみならずその後の子育てにおいて中心的な役割を果たす女性が,それらのライフイベントの中で働き続けやすい環境をつくることは,今後の日本の生産性向上へつながるとともに少子化の改善にも寄与するとの考えである。ましてや,医師となれば専門性の高い資格を有しており,様々な現場で活躍し患者や社会へ貢献することが望まれる。こういった中で,「日本再興戦略」という政策において「女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会」[]が開かれたり,日本医師会を通じて女性医師支援センター[]を設置するなどの取り組みがなされている。

厚生労働省の資料によると全医師数に占める女性医師の割合は増加傾向にあり昭和55年時点では10.0%であったが,平成24年時点で19.7%となっている[]。年代別にみると若いほど女性医師の割合が多く,20代の医師では35.5%が女性医師となっている。診療科別の割合では,皮膚科(44.3%)や眼科(37.5%),麻酔科,小児科,産婦人科では女性医師の占める割合が高く,外科(7.15%)や脳外科(4.9%)では女性医師の割合が低くなっているが,注目すべきは外科でも年代が若くなるにしたがって女性医師の割合が増加する傾向は同様であり20代では20.8%が女性医師という点である[]。今回の特集では,さまざまな環境の下で活躍している女性内分泌外科医とのことでテーマをいただいているが,内分泌外科の分野では実際に今回の特集に参加されている先生方の様に活躍されている女性外科医がたくさんおり,私自身も自分なりに環境を整えながら女性外科医としてのキャリアを継続している。私が思うクリニック診療という場でのつよみについて述べる。

内分泌・甲状腺外科専門医を取得するまで

私自身は,大学病院に10年以上勤務し内分泌・甲状腺外科専門医を取得,その後は自分のライフスタイルに合った環境の中で自分の専門性を活かした診療をすることができている。これは,身近にロールモデルとなる女性医師(母)がいたこと,大学病院時代の先輩後輩に女性医師が多数おり,皆がそれぞれのライフスタイルの中で医師として活躍していたことが大きい。

私は医学部卒業の時点で外科医を志そうと考えており,なおかつ長く外科医を続けていきたいと考えていたため,大学病院の内分泌外科に入局した。これは,身近な存在の母親が大学病院で麻酔科をしていたため女性医師でも続けていけるのは外科の中でも内分泌外科であろうとのアドバイスを受けての決断だった。その後,2回計2年間の一般外科研修の出張を含めて13年間大学病院にて内分泌外科,乳腺外科を中心とした診療を続ける中で必要な資格を取得した(表1)。私は,結婚,妊娠ともに未経験で,幸い介護や自身の病気の経験がない。勤務継続や資格取得に関して制限となるような状況はなく,むしろ多くの時間を診療や資格取得に費やすことができた。がそれでも診療と並行して資格取得や研究などを十分に行ってきたのは,やはり内分泌外科,乳腺外科は他の外科分野と比べて急な対応を要する状況が少なく自分の時間や体力の配分を予想可能で調整できたからだと考えている。ほとんどの資格は,必要な年数で取得することができ,また,内分泌外科医として十分以上の経験をさせていただくことができた大学病院勤務であった。

表1.

勤務履歴

現在の環境:クリニック診療

大学病院に13年間勤務ののち,2013年6月開院の南池袋パークサイドクリニックに開院時より勤務している。当院は,内分泌・甲状腺外科専門医が3名常勤しており,内分泌外科,乳腺外科の専門のクリニックである。専門性の高い診療で診断から治療方針決定までのステップを迅速に進めることを基本方針としており,われわれが持っている専門外科医としての技術・知識を診療として提供できるよう手術治療を要する症例に対しては連携病院にて手術を行うという体制を整えた。

これらの環境は,大学病院に所属していれば当たり前に整っている環境であるが,クリニック診療という場で安全にこれらを提供するために開院時より様々な取り組み,工夫,改善を行ってきた。そうして,大学病院からクリニックに環境を変えても,内分泌外科・甲状腺外科専門医を持つ女性外科医としてのキャリアを手放すのではなく,継続することが可能となっている。

クリニック診療における女性医師のつよみ

調査期間が短いが,当院の甲状腺初診患者の内訳を図1に示す。女性が9割を占めており,紹介状がなくても受診可能なためか気になる症状があるという受診理由が多くなっている。気になる症状の一部は更年期や月経前症候群などと重なる症状であり婦人科受診後に甲状腺精査を勧められて受診する場合がある。または,テレビやインターネットの情報から自分の気になっている症状の原因が甲状腺機能異常ではないかと考えて受診という場合などである。こういった場合は,その症状の内容から女性医師の診察を希望する例がおり,女性の患者では同性の医師に相談したいという気持ちが強い。また,不妊治療に関連する受診が一定数いるが,この場合も女性医師の診察を希望することがある。不妊治療に関連する受診は今後も増加すると考えられ,不妊治療による不安や葛藤などについて同性の立場からのサポートが求められていると感じる。

図1.

当院の甲状腺初診患者の内訳

こういった診療は大学病院の内分泌外科外来では経験できなかったことであり,クリニックでの外来中心の診療で女性医師としてのニーズがあることを実感した。今後は,女性特有の悩みを持つ内分泌・甲状腺疾患の患者のサポートということを新たな自分の強みとしていきたい。

内分泌・甲状腺外科専門医を持つ女性外科医としてクリニックに勤務するつよみ

図2に当院の手術体制について示した。当院はクリニックであるが,われわれの持つ専門外科医としての技術,知識を提供するため連携病院に入院の上で当院手術チームにより手術を行っている。当然のことながら,この体制で安全に手術を行っていくのには工夫が必要である。

図2.

当院の手術体制

①甲状腺手術の合併症は特殊なものがあるので,周術期管理は積極的に当院医師がかかわる

②普段から連携病院担当チームと患者について情報共有をはかる

③手術にかかわる説明は当院医師からしっかり行う

④連携病院担当チームへの教育として,必要な知識や情報を常に共有する

この体制での手術を提供しもうすぐ5年が経とうとしているが,上記の点を徹底し現在までのところ安全に手術を行うことができ,お互いにメリットを得ている。

次に図3に私の週間スケジュールを示す。完全週休2日で外来診療を中心に検査や処置,クリニックの事務関連の仕事,ミーティングなどを行っているが,ミーティングなど診療以外の仕事を朝や昼の時間帯に行うことで,終業時間はほぼ定時にすることができる。

図3.

業務週間スケジュール

先に示したような手術の体制を取っているが,通常の周術期経過であればわれわれが当直業務や休日出勤をする必要はなく平日はクリニックの診療に集中することが可能となるため女性でも長く外科医としてのキャリアを継続しやすい環境になっている。

この体制は,しっかりとした情報共有や信頼関係の構築が絶対条件と考えるが,その条件の元では,われわれは必要最低限の時間拘束でクリニックの患者に専門的な手術治療を提供できるという利点があり,連携病院では病院として取り扱う手術数や手術種類の増加という利点がある。

おわりに

医師という専門的な資格を持つ女性が特に外科でしっかりとキャリアを積み仕事を継続するためには職場や家庭の環境を整える必要があるが,内分泌外科・甲状腺外科分野においては専門医を持つ女性医師がたくさん活躍している。今後さらに,内分泌・甲状腺外科領域が女性医師の活躍の場となることを期待する。

当院の手術体制である病診連携は,総合病院とクリニック間でお互いにメリットになり得る上,クリニック診療中心に仕事をしている女性外科医の活躍の場となり得る。

【文 献】
 

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