日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
35 巻, 2 号
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巻頭言
目次
編集委員会
特集1
  • 鈴木 眞一
    2018 年 35 巻 2 号 p. 69
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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  • 鈴木 眞一
    2018 年 35 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    東日本大震災後の原発事故による放射線の健康影響を見るために,福島県では大規模な超音波検診が開始された。甲状腺検診を実施するとスクリーニング効果から一度に多くの症例が発見されるが,過剰診断にならないように,検診の基準を設定した。5mm以下の結節は二次検査にならず,二次検査後の精査基準も10ミリ以下の小さいものにはより厳格な基準を設けて,過剰診断を防ぐことを準備した上で検診を行った。その結果発見治療された甲状腺癌は,スクリーニング効果からハイリスクは少なく,かつ非手術的経過観察の対象となる様な被胞型乳頭がんは認められず,微小癌症例でも全例浸潤型でリンパ節転移や甲状腺被膜外浸潤を伴っていた。したがって,一次検査の判定基準,二次検査での精査基準さらに手術適応に関する基準などから,超音波検診による不利益は極めて少ないものと思われた。一方で発見甲状腺癌は過剰診断ではないのであれば,放射線の影響による甲状腺癌の増加ではと危惧されるが,現時点ではその影響を示唆する様な事象は得られていない。

    以上より,放射線被曝という特殊状況下で検診を余儀なくされたにも関わらず,厳格な基準を設定しこれを遵守しながら実施することによって,過剰診断という不利益を極力回避できていることがわかった。

  • 宮内 昭, 伊藤 康弘
    2018 年 35 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    最近の30年間に世界的に甲状腺癌が急増している。増加したのは小さい乳頭癌のみであり,甲状腺癌による死亡は増加していない。このことから,小さい乳頭癌の過剰診断・過剰治療を警告する報告が多い。剖検でのラテント癌の頻度や甲状腺癌検診での癌の発見率と臨床的甲状腺癌罹患率の著しい乖離からわれわれは成人の微小乳頭癌の大部分はほとんど進行しない無害な癌であるとの仮説を立て,1993年から成人の低リスク微小乳頭癌に対して積極的経過観察を行ってきた。本論文では甲状腺癌検診のあり方への提言,積極的経過観察の適応と注意点および積極的経過観察の結果を手術群と対比して報告し,さらに積極的経過観察中の微小乳頭癌の生涯腫瘍進行予測値についても紹介する。

  • 志村 浩己
    2018 年 35 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    東日本大震災の半年後より,福島県において小児・若年者に対する甲状腺超音波検診が開始されたのに伴い,他の地域においても甲状腺に対する関心が高まっており,甲状腺超音波検査が行われる機会が増加していると考えられる。また,近年の画像診断技術の進歩に伴い,他疾患のスクリーニングや診断を目的とした頸動脈超音波検査,胸部CT,PET検査などでも甲状腺病変が指摘されることも増加している。

    成人において甲状腺超音波検査を実施することにより,0.5%前後に甲状腺癌が発見されうることが報告されている。これらのうち,微小癌に相当する甲状腺癌には生涯にわたり健康に影響を及ぼさない低リスク癌も多く含まれていると考えられている。従って,甲状腺検診の実施に当たっては,高頻度に発見される結節性病変の精査基準あるいは細胞診実施基準をあらかじめ定めてから行うべきであろう。

    甲状腺微小癌の超音波所見としては,比較的悪性所見が乏しいものから,悪性所見が揃っている一見して悪性結節と考えられるものまで多様性に富む。日本乳腺甲状腺超音波医学会では,結節の超音波所見に基づく甲状腺結節性病変の取り扱い基準を提唱しており,日本甲状腺学会の診療ガイドラインにおいてもこれが踏襲されている。この基準により,比較的低リスクの微小癌は細胞診が行われないことになり,比較的高リスクの微小癌のみが甲状腺癌として臨床的検討の俎上に載ることになる。本稿においては,微小癌の診断方針について現状の基準について議論したい。

  • 長沼 廣, 廣川 満良
    2018 年 35 巻 2 号 p. 87-89
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    甲状腺微小癌とは1cm以下の甲状腺悪性腫瘍で,甲状腺癌取り扱い規約第7版では乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,低分化癌,未分化癌,その他の悪性腫瘍を含んでいる。WHO分類第4版では1)papillary microcarcinoma,2)medullary thyroid microcarcinomaのみを微小癌として取り上げている。甲状腺微小癌は乳頭癌,濾胞癌,髄様癌でもそれぞれの組織学的特徴を確認できれば,十分診断可能である。T分類の評価における微少浸潤の判定は難しい場合があるが,WHO分類第4版およびTNM分類第8版では微少浸潤を伴う微小癌はpT1aとして扱われている。日本の規約と浸潤程度の定義が異なっていることに注意する必要がある。良性疾患の中に発見される偶発癌はほとんどが微小癌で,4~10%程度の頻度で見られる。切り出しの際に肉眼的に数mmの充実性腫瘤を見つけた場合は努めて検索することが大切である。今後画像診断技術が進めば甲状腺微小癌が数多く発見されるが,境界悪性,低悪性腫瘍の概念が出ている現在では経過観察を含めた治療選択に苦慮する。

  • Victor Alexandrovich Kondratovitch, Pavel Yevgenyevich Korotkevich, Yu ...
    2018 年 35 巻 2 号 p. 90-103
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    The objective of the study was to explore the impact of the surgery volume on the course and outcome of the papillary thyroid cancer depending on the risk factors. This is a retrospective study with 3,266 successive cases of papillary thyroid cancer registered from 1990 till 2005 in subjects residing in Minsk or Minsk Region at the moment of diagnosing, with a medium observation of 10.2 years. In the group of postoperative patients, 5-, 10- and 20-year cause-specific survival was 99.0±0.2%, 98.0±0.2%, 97.3±0.6%, and cumulative relapse rate was 6.0±0.5%, 8.2±0.6%, 14.3±1.5%, respectively. Life expectancy of patients with papillary thyroid cancer is mainly established by the independent prognostic factors, and not by the volume of surgical intervention, which is related to the early diagnosing of a relapse and timely performed repeated surgery. The key factors defining the risk of death due to cancer are age over 55 years in women (PR=30.08, p<0.0001) , and 35 years (PR=22.15, p<0.0001) in men, presence of distant metastasis (p<0.0001) , and massive extrathyroidal extension of a tumour (p<0.0001) . Metastatic involvement of regional lymph nodes 7.26-fold increases the risk of relapse (p<0.0001) and is a key prognostic factor. Organ preservation surgeries 3.3-fold increase the risk of relapse (p<0.0001) , and absence of lymph node dissection - 2.85-fold (p<0.0001) .

    Conclusions:

    1. Age, distant metastasis, and massive extrathyroidal extension are the key independent prognostic factors, which define the risk of death due to papillary thyroid cancer. The age of 55 years for women and of 35 years for men can be more accurately used for division of patients between the prognostic groups.

    2. Thyroidectomy and bilateral lymph node dissection significantly reduce the risk of relapse, but statistically do not influence the cause-specific survival.

    3. Presence of metastasis in the regional lymph nodes is a decisive factor of relapse. It testifies to insufficiently removed level III and level IV lymph nodes in case of any signs of their metastatic affection, and requires an extension of the lymph node dissection volume in such patients.

  • 祖父江 友孝
    2018 年 35 巻 2 号 p. 104-106
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    USPSTFは,2017年の更新で,超音波および触診による甲状腺がん検診について,不利益が利益を上回る(推奨D)ため,無症状の成人については実施すべきでないと判断した。ただし,これは過剰診断についての実証的証拠に基づいた判断ではない。過剰診断の定量評価については,さらに検討が必要である。

特集2
原著
  • 正木 千恵, 杉野 公則, 石垣 貴之, 田中 智章, 大宜見 由奈, 尾作 忠知, 赤石 純子, 薮田 智範, ヘイムス 規予美, 友田 ...
    2018 年 35 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    進行甲状腺癌治薬物療で病勢進行がみられた後に直ちに次の治療ラインやBest supportive careへ移るべきかについて明瞭な指針はない。PD判定法には画像上の病勢進行を示すRECIST PDの他に臨床症状やPS(performance status)などを指標とするclinical PDがあり,われわれは甲状腺分化癌レンバチニブ治療での両指標によるPD後の予後を検討した。PDとなった16例のうち生存例は6例,死亡例は10例。PD診断後の生存期間は,治療継続群が治療終了群に比して(p値0.0002),PSが良好な群はPS≥3の群に比して生存期間が長かった。PS3以上となった後の生存期間は治療の有無に関わらず短かった(p=0.2807)。PDとなった場合,その原因やPSに応じて薬剤変更も考慮の上で治療継続を考えるが,PSが悪い場合にはBSCを積極的に考慮する。

  • 田中 克浩, 緒方 良平, 太田 裕介, 惣田 麻衣, 岸野 瑛美, 菅原 汐織, 齋藤 亙, 小池 良和, 山下 哲正, 野村 長久, 山 ...
    2018 年 35 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    腺腫が原因の原発性副甲状腺機能亢進症術後のPTH推移について2006年1月から2017年6月までに当科で手術を施行した72例の症例を後方視的に検討した。術後のPTHが1度でも基準値を上回った症例は16例(22.2%)であった。16例の術後PTHの詳細を検討すると,術後半年以内に一回の高値を示した症例が9例,半年以内で複数回の高値症例は7例であったが,術後高カルシウム血症をきたした症例は7例で,いずれも一過性でカルシウム補充を受けていた期間での一時的な現象であり,カルシウム補充なしで高カルシウム血症が持続した症例は認められなかった。術後PTH低下不良群では術前intact PTHとALPが有意に高く(P<0.0001とp<0.05),さらにPTH測定別では有意にwhole PTH測定例では有意に低下不良例が多かった(p<0.05)。術前ALP高値がPTHの術後低下不良に有意に関係する独立因子であった(p<0.01)。観察中に再発例は認めなかったが術後半年程度はPTHが安定しない症例が存在するので注意が必要である。

症例報告
  • 山本 正利, 田中 克浩, 宮崎 一恵, 岸野 瑛美, 菅原 汐織, 齋藤 亙, 小池 良和, 太田 裕介, 山下 哲正, 野村 長久, 山 ...
    2018 年 35 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    症例は36歳女性。左頸部腫瘤指摘され当院へ紹介。紹介時の超音波検査では20mm大の囊胞の辺縁のみに充実部があり,細胞診の結果からも囊胞内の結節性甲状腺腫と診断し外来経過観察とした。1年後の再診時の超音波検査では囊胞内腫瘤は30mmまで増大し,その内部はほぼ充実成分に置き換わっていた。細胞診では明らかな乳頭癌の所見はないが核異型を認めclassⅢとの結果であり,急激に増大していることより手術施行した。術後病理では円柱細胞癌との診断であった。円柱細胞癌は,以前は予後不良とされていたが近年の報告では甲状腺組織外浸潤(以後:節外浸潤)がなければその臨床予後は通常の乳頭癌と同等であるとの報告が多数みられている。本症例に関しても節外浸潤なく手術可能であった1例を経験したので報告する。

  • 中本 翔伍, 池田 雅彦, 久保 慎一郎, 山本 真理, 板野 陽子, 黒田 絵理, 山本 康弘, 寺本 未織, 赤松 誠之, 重西 邦浩, ...
    2018 年 35 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/24
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    レンバチニブには腫瘍縮小・壊死に伴う頸動脈・静脈からの出血の有害事象があり,局所進行例に対する使用について注意喚起されている。われわれは,レンバチニブが奏効して生じた皮膚・軟部組織欠損を大胸筋皮弁で被覆・充填しQOLを改善できた症例を経験したので報告する。症例は86歳男性。甲状腺乳頭癌未分化転化で当科受診し,放射線照射後にレンバチニブを開始した。頸部腫瘍は著明に縮小したが,皮膚・軟部組織欠損となった。出血予防,QOL改善目的に大胸筋皮弁による被覆・充填を行った。術後6カ月間はQOL維持が可能であった。局所進行甲状腺未分化癌に対するレンバチニブ治療で生じた皮膚・軟部組織欠損に対して,筋皮弁などによる被覆・充填は有用であると考えられた。

内分泌外科専門医 過去の出題例と解説
編集後記・奥付
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