日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
特集1
乳頭癌の遺伝子異常
光武 範吏
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2021 年 38 巻 1 号 p. 2-5

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抄録

甲状腺乳頭癌(papillary thyroid carcinoma:PTC)は甲状腺癌の約9割を占める頻度の高い癌である。PTCでは,mitogen-activated protein kinase(MAPK)経路を恒常的に活性化する変異が主たるドライバー変異とされ,PTC発生に大きな役割を果たしている。成人ではBRAFV600E 変異が多いが,年齢が低くなるとRET/PTCなどの融合遺伝子の頻度が上がる。また,放射線被ばくによって発生するPTCでも融合遺伝子の頻度が高い。近年,これらに加え,TERTプロモーター変異が注目され,この変異を持つPTCは,臨床病理学的な悪性度が高く,予後不良であることが分かってきた。この変異は,年齢と非常に強い相関があり,45歳くらいから検出されるようになり,高齢者ではその頻度が急増する。現時点で最もインパクトの高い変異である。

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