2011年の東日本大震災に伴う原発事故後行われた甲状腺検診によって発見された甲状腺癌について臨床病理組織学的所見について解説した。
平均年齢は17.8歳で性差は1:1.8であった。術前リンパ節転移陽性例は22.4%にもかかわらず術後は77.6%と増加しその大半が気管周囲リンパ節であった。術後の被膜外浸潤例が39%と高率であった。M1は2.4%であった。術式は全摘8.8%,片葉切除91.2%でありリンパ節郭清は全例に施行された。病理組織は98.4%が乳頭癌でその大半が古典型であった。また遺伝子変異では69%がBRAF変異で,再配列異常は少なかった。RET/PTC3や充実型亜型は少なくチェルノブイリとは全く異なる結果であった。以上より,福島での甲状腺癌はチェルノブイリとは大きく異なる一方,性差以外では通常の臨床で扱われていた小児甲状腺癌と差は認めなかった。