2021 年 19 巻 p. 27-56
本研究では,Christoffersen(2012)等のダイナミック非対称tコピュラにおいて,定数として扱われた自由度および歪度パラメータにマルコフ・スイッチング・モデルを導入し,本邦株式市場の依存構造を研究する.研究の主な焦点は,(1) 非線形な依存構造の状態変化が示唆する市場環境,(2) 資産間の下側裾依存性に関する動的特徴,(3) リスク管理の実務への応用可能性である.研究結果から,本研究で提案したマルコフ・スイッチング・ダイナミック非対称tコピュラは,本邦株式市場の平常局面およびダウンサイド・リスク顕在化局面の遷移を捉え,AIC規準の観点からダイナミック非対称tコピュラ対比で本邦株式市場のデータへの適合度を高めることが示された.加えて,シクリカル・セクターおよびディフェンシブ・セクターへの分散投資は下側裾依存性を低下させ,市場下落時の耐性を上述した両局面ともに高めることが示唆された.さらに,マルコフ・スイッチング・ダイナミック非対称tコピュラを用いて非線形な依存構造の状態変化を捕捉することで,VaRおよびCVaRの推定精度が改善する傾向にあることを示した.