食品と低温
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冷凍サヤインゲンの解凍に関する研究
(第1報) 解凍によるビタミンCの変動
今中 鏡子藻黒崎 敏晴
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1981 年 7 巻 2 号 p. 48-53

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抄録
冷凍食品の研究の一環として, 消費段階における冷凍食品の取り扱い方を検討するため, 冷凍サヤインゲンを材料として解凍および調理時点のL-アスコルビン酸残存量を測定し統計処理を行った。
冷凍サヤインゲンの製造にあたっては, -42℃で凍結し-20℃で零烈した。貯蔵期間は解凍実験では5カ月間, 調理時の実験では2日間貯蔵した。凍結時の最大氷結晶生成温度帯は, 平均-2.5℃-3.2℃であり, 温度帯通過時間は6-9分間であった。
解凍方法はいずれの場合も最終解凍温度10℃とし, 日常よく行われている (1) 電子レンジ解凍, (2) 水かけ解凍, (3) 自然解凍, (4) 冷蔵庫解凍の4方法について実験し検討を行った。また調理時点ではいずれの場合もブランチングまでを一定条件とし (1) 冷凍せず調理, 他は凍結貯蔵後 (2) 解凍せず調理, (3) 冷蔵庫解凍後調理について比較した。
1. 解凍後のL-アスコルビン酸の残存率は, ブランチング時に比べ「冷蔵庫解凍」によるものが最も高く86.2±5.2%であり, ついで「自然解凍」の80.8±4.2%と「電子レンジ解凍」の80.8±4.5%, 最低は「水かけ解凍」の76.4±6.6%であった。t検定においても有意差を認め, 「冷蔵庫解凍」が冷凍サヤインゲンの解凍方法として適切であった。「水かけ解凍」によるL-アスコルビン酸の残存量は最も低い値を示し, 給食施設でよく行われているこの方法の検討が望まれる。
2. ブランチング後-42℃で凍結し, -20℃2日間貯蔵したサヤインゲンを「冷蔵庫解凍」した場合, L-アスコルビン酸の残存量は, 新鮮なサヤインゲンを「冷凍せず調理」したものに比べ, 約20%減少が認められた。
このように最適条件で凍結から解凍までを行ったサヤインゲンであっても生のものに比べ調理時点でL-アスコルビン酸残存量に差異が認められることから, 冷凍サヤインゲンを用いる場合, 解凍時における温度管理や時間管理が重要であり, 消費段階における食品的価値の低下を防ぐことが望まれる。
3. 冷凍サヤインゲン「解凍せず調理」した場合と「冷蔵庫解凍後調理」した場合との間には, L-アスコルビン酸残存量に有意差が認められなかった。
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