Journal of Applied Glycoscience
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第15回糖質関連酵素化学シンポジウム
未利用農産物は難分解性糖質か?
―大豆(オカラ),コーヒー豆の場合―
笠井 尚哉
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2008 年 55 巻 2 号 p. 133-141

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抄録

未利用農産物の有効利用についての関心が再び高くなっている.これらの多くは,未利用農産物とバイオマス-エタノール生産・化学資源としての有効利用あるいは粕・廃棄物-環境問題としてリンクされてきている.そして,ようやく環境問題やエネルギー問題として改めて検討すべき時代に入ったものと思われる.農産物は古くから食糧や飼料そのものであり,種子・果実は,食品生産のためのデンプンやタンパク質あるいは脂質の給源でもある.しかしながら,農産物がすべて利用できることは実に少ない.タンパク質,糖質,脂質が食品素材として分離・抽出されたあとの農産物は,結局,その多くがいわゆる「粕」として廃棄・燃焼されているのが現状である.特に食品工業が発展して加工食品が大量生産されてからは著しい.たとえば,大豆ではオカラであり,醤油粕でもある.これらは基本的には農産物であるので,当然ある程度の酵素分解は可能であり,可溶化物の利用も可能なはずである.決して活性炭にしかできないような難分解性繊維ではない.また当然ながら大豆であるので多くの有用な大豆成分を未だ多く含んでいる.これらの副産物の多くは難分解性繊維のみではなく糖質やタンパク質,あるいはそれらの複合体から構成されており,詳細な分析が非常に困難とされているだけである.それゆえ,成分や構造について詳細には検討されておらず,素材のもつ可能性についても十分には理解・利用されていないのである.たとえば醤油粕やオカラ=難分解性繊維(!?)として捉え,単純に「セルラーゼ-組み替え-高生産」図式で単純に解決できるとするのは明らかに誤りである.私たちは,ダイズとコーヒー豆をモデルに,その細胞の構成成分とその構造を考えながら,最適な食品加工用酵素の選択,各構造物の単離と検討および化学成分検討を行い,高度酵素分解を行った.

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© 2008 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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