Journal of Applied Glycoscience
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第17回糖質関連酵素化学シンポジウム
グリコーゲンの in vitro における新しい合成方法の開発,および得られたグリコーゲンの性質
梶浦 英樹高田 洋樹空山 恒久植山 玲子角谷 亮古屋敷 隆小島 岩夫竹田 良三栗木 隆
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2010 年 57 巻 2 号 p. 105-111

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抄録

酵素を用いたグリコーゲンの新しい合成方法を開発した.この方法では,ブランチングエンザイム(BE, EC 2.4.1.18)の基質として短鎖アミロースを使用する.得られた酵素合成グリコーゲン(enzymatically synthesized glycogen, ESG)の分子量は,BEの種類,基質であるアミロースの分子量,基質濃度に依存した.植物由来BEとBacillus cereus由来BEはこの方法で高分子グルカンを合成することができなかったが,他の6種類の細菌由来BEはESGを合成することができた.特にAquifex aeolicus由来のBEが分子量3000 kDaから30,000 kDaの大きさのESGを合成するのに最も適していた.さらにアミロマルターゼ(AM, EC 2.4.1.25)を反応系に加えることにより収率が大幅に上昇し,最大約65%まで達した.この方法で得られたESGの構造を分析したところ,平均単位鎖長は8.2-11.6,内部平均鎖長は2.0-3.3,外部平均鎖長は4.2-7.6であった.透過型電子顕微鏡による観察および固有粘度の分析によって,ESG分子が球形であることが示された.また,ESGは,澱粉と違ってプルラナーゼでほとんど分解されなかった.ESGの水溶液の色は,オパール色(青みがかった乳白色)であり,ヨウ素によって赤茶色に呈色した.これらの分析結果からESGと天然物由来のグリコーゲン(natural source glycogen, NSG)がほぼ同じ分子形状,溶液物性をもつことがわかった.

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© 2010 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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