澱粉工業学会誌
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甘藷の生育経過に関する試験
坂井 健吉丸峯 正吉
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1960 年 8 巻 2 号 p. 39-47

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抄録
 1)原料用甘藷の収量や澱粉歩留りに関し,年次別,地域別,時期別変化を知るため全国的規模において6カ所で甘藷の生育経過に関する連絡試験を行つた。 2)試験実施年度の気象は,一般に前半は高温,寡雨,多照であったが,後半は適雨と高温多照が続いたので,塊根の肥大は概ね順調に進み平年作程度の収量をあげ得た。とくに鹿児島は実施場所の土質にもよるが,最も多収であつた。 3)地上部の最盛期は概ね9月中旬であつたが,九州3カ所(長崎,熊本,鹿児島)と他の3ヵ所(千葉,倉敷,岩城)では明らかな差があり,前者は早く後者はそれより相当遅れた。これには地域差もあつたが旱魃の影響がより大きかつた。 4)藷の収量は平均して農林2号が最も多く地域適応性の高いことを示した。全般的に藷個数は,何れの場所でも早期に決定したが,それらが肥大する時期は場所により異り九州3カ所は早期に肥大したが,その他は緩慢であった。 5)切干歩合や澱粉歩留りは多少のズレはあつたが概ね前者は9月上旬,後者は9月下旬に最高になり,それ以降は平行的かまたは若干低下する場所と平行的に経過してさらにやや上昇する場所(九州3ヵ所にこの傾向が強かつた)とがあった。 6)アール当り澱粉生産量は澱粉歩留より収量に大きく左右されるので,収量が増加した間は逐次増加したが地域別にはかなり早期に比較的大になった場所があり,また生育期聞の長い九州3カ所では11月中旬が最高で以降は低下した。 7)澱粉の白度は農林2号が最も高く,次いで護国藷,農林1号であった。時期的には10月上旬頃から一定になったが,場所によりかなりの差があった。
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© 日本応用糖質科学会
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