澱粉科学
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でんぷん糊の老化の温度依存性
檜作 進伊藤 恵子前田 巌二国 二郎
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1972 年 19 巻 2 号 p. 70-75

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抄録

 1)玉蜀黍,小麦,馬鈴薯,甘藷,糯玉蜀黍,糯米の5%でんぷん糊を,0~70℃ の定温(10℃ ごと)に1時間保存し,老化の温度依存性を調べた。糊化度は,グルコアミラーゼによる消化法(A法)と電流滴定による結合ヨード量の測定(I法)で行なった。でんぷん糊は,5%のでんぷん懸濁液を100℃ に5分および30分間加熱して調製した。 2)調製時の糊の糊化度は,甘藷や馬鈴薯でんぷんでは,糊化時間の長短,測定方法にかかわらず完全糊化(糊化度97%以上)と判定された。小麦や玉蜀黍でんぷんは,30分の糊化で,A法では完全に糊化しているとみられたが,I法では90%程度の糊化度を示し,アミロース分子の糊化が十分でないことが示唆された。玉蜀黍でんぷんの5分糊化の糊では糊化度はさらに悪く,82%であった。 3)いずれのでんぷんも,5分加熱の糊のほうが30分加熱の糊よりも老化しやすく,低温ほど老化が速やかで,0℃ が最も老化しやすかった。 4)糯質のでんぷんは最も老化し難く,0℃ においても老化は感知されなかった。ついで甘藷でんぷんが老化し難く,30分加熱の糊では0℃ においてもほとんど老化を起こさなかったが,5分加熱の糊では0~10℃ でわずかであるが老化がみられた。馬鈴薯でんぷんも甘藷でんぷんと同様な結果を示したが,甘藷よりは少し変化を起こしやすい性質が認められた。小麦でんぷんは,いも類でんぷんよりもはるかに老化しやすく,40~50℃以下の温度で老化が速やかになった。玉蜀黍でんぷんは小麦でんぷんと優劣をつけ難いが,50~60℃ 以下の温度で老化が速やかであった。 5)いずれの場合も,老化によってI法による糊化度の低下が顕著で,アミロース分子が老化を主導していることが示唆され,でんぷんの種類により,アミロース分子の老化の温度依存性に明らかな特徴がみられた。

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© 日本応用糖質科学会
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