澱粉科学
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マルトトリオースを生成する新規アミラーゼの精製と酵素的性質
若生 勝雄橋本 誠二久保 村哲横田 公雄相川 清金枝 純
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1979 年 26 巻 3 号 p. 175-181

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抄録

 放線菌アミラーゼの検索を行い,マルトトリオース生成アミラーゼを産生する菌株を見い出したのでその内の1菌株について同定を行い,アミラーゼの精製と酵素的性質について検討を行った.1)NA-468アミラーゼ生産菌は胞子,胞子形成菌糸の形状,気菌糸の色,炭素源の同化性等の結果からStreptomyces griseusと同定された. 2)NA-468アミラーゼは培養炉液より約100倍精製され,ディスク電気泳動的に単一であった.比活性は測定温度40℃ の時5,450u/mgproteinであった.分子量またはサブユニットの分子量はSDS電気泳動法から約55,000と推定された. 3)反応の最適温度,pHはそれぞれ45℃,pH5.6-6.0であった.pH安定性は3.5-6.5の間で最高活性値の80%以上の活性が残存した.また熱安定性では45℃から急激に失活し始め,55℃ で完全に失活した. 4)金属イオンの影響はLi+が活性化に,Hg2+,Cu+,Zn2+が阻害的な効果を示した. 5)NA-468アミラーゼはプルラ.ン,β-シクロデキストリン,ワキシコーンスターチβ-限界デキストリγには作用せず,短鎖アミロースで最高の水解速度を示した.また分岐度の高い基質ほど作用し難い傾向が見られた.水解限度は短鎖アミロース,可溶性澱粉,ワキシコーンスターチの場合それぞれ約100 ,55,51%であった. 6)ペーパークロマトを用いて経時的反応生成物を調べた結果,可溶澱粉からはマルトトリオースのみが生じた.また2次元ペーパーク卩マトの結果からマルトテトラオースが最小基質であり,それ以上のマルトオリゴ糖末端から3番目のグルコシド結合を規則的に水解する作用を有することが観察された. 以上の諸結果からNA-468アミラーゼはいわゆるexo型アミラーゼに共通する特徴を有し,β-アミラーゼ,グルコアミラーゼ等と同様に分類されるのではないかと推測された.

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© 日本応用糖質科学会
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