抄録
1. 全国の路傍や原野にごくふつうにみられる草本であるギシギシ (タデ科), スイバ (タデ科), ウド (ウコギ科) の根, およびソクズ (スイカズラ科) の根茎から澱粉を単離精製した. 澱粉の収率はそれぞれの生鮮組織に対し約7, 6, 5, 8%であった.
2. 各澱粉につき, 水分, 蛋白質およびリンの分析, 顕微鏡観察, 粒径分布, X線回折, ヨウ素呈色, 生澱粉のグルコアミラーゼによる消化, 膨潤力, 溶解度, アミログラフィーなどの諸項目につき測定し, それぞれの澱粉の特性を考察した.
3. ギシギシとスイバの澱粉はともに抽出の途中で赤色味を帯びることをはじめ, 多くの性質が近似していた. しかし粒の形がかなり違っていた. ウドの澱粉は膨潤力が大きく, 6%濃度のアミログラムではわずか58℃で粘度の上昇がみられた. ソクズ澱粉はすべて1μm程度の微粒であるにもかかわらず, グルコアミラーゼに対して抵抗性が大きく, アミログラム上の粘度も高かった. また膨潤力がきわめて大きく, そのため溶解度は温度の上昇にともなって減少する特異的な結果を示した. このような物性にはリン酸含量の高いこと (0.095%) も関連していると推定される.