抄録
1.つる性の植物であるツルドクダミ(タデ科)とモミジヒルガオ(ヒルガオ科)の塊根,およびヤマノイモ(ヤマノイモ科)の担根体から澱粉を抽出精製した.澱粉の収率はそれぞれの生組織に対して,約6,4,および20%であった. 2.各澱粉について,水分,蛋白質およびリンの分析,顕微鏡観察,粒径分布,X線回折,ヨウ素呈色,生澱粉のグルコアミラーゼによる消化,膨潤力,溶解度,アミログラフィーなどの諸項目につき測定し,それぞれの澱粉の特性を考察した. 3.ツルドクダミ澱粉は小形で,B型のX線回折図形を示し,比較的膨潤しやすい性質であった.モミジヒルガオ澱粉は,B型のX線回折図形であること以外は,澱粉粒の形を含め同属のサツマイモ澱粉にきわめてよく似た性質を示した.またヤマノイモ澱粉はやや大形でなめらかな形をした粒であり,糊化膨潤しにくい澱粉であることがわかった. 本試料の採集には,当学指宿植物試験場主任石畑清武助教授および角田貴代美さんのご協力をいただき,またX線回折に関しては本学部土壌学教室のお世話になった.ここに付記し謝意を表する.