Journal of Applied Glycoscience
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湿熱処理カタクリ澱粉め糊化特性とゾルゲル転移点近傍の弾性挙動
相川 りゑ子阿久澤 さゆり澤山 茂川端 晶子
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1999 年 46 巻 2 号 p. 151-157

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抄録

 カタクリ鱗茎から澱粉を調製し,対照として馬鈴薯および食用カンナ澱粉の未処理と湿熱処理澱粉を用いて,糊化特性とゾルーゲル転移点近傍の弾性挙動を検討し,ゲル化機構を推測した. カタクリ澱粉をはじめ,いずれの澱粉も湿熱処理澱粉は未処理澱粉に比べて,膨潤力および溶解度ともに抑制される傾向が認められた.未処理澱粉のX線回折図形はいずれもB図形であったが,湿熱処理を行うことにより,カタクリ澱粉は第4a環と第6a環のみが測定され,結晶性の崩れが認められた.しかし,馬鈴薯および食用カンナ澱粉はA図形へと移行した.α-アミラーゼによる被消化性では,未処理カタクリ澱粉は,馬鈴薯および食用カンナ澱粉は20数%の消化率と比較すると,24時間後56.1%という高い消化率を示した.また,湿熱処理することによっていずれの澱粉も消化率が高くなった.ビスコグラム特性では湿熱処理カタクリ澱粉も未処理澱粉に比べて,粘度立ち上り温度は高温側に移行することが認められ,湿熱処理澱粉は冷却過程においてブレークダウンを示さなかった.澱粉糊液の動的弾性率の濃度依存性から,ゾルーゲル点移転近傍にパーコレーション理論を適用して解析を行った結果,未処理カタクリ澱粉糊液では1.5wt%,湿熱処理では2 .5wt%で弾性パーコレーションが起こり,スケーリング則の成立することが認められた.また,食用カンナ澱粉は未処理澱粉にのみスケーリング則が適用できた.未処理および湿熱処理カタクリ澱粉のスケーリング指数は3 .2および3.7が求められ,かなり剛直なゲル構造であることが,また,湿熱処理によって低濃度では柔らかいが高濃度になると硬くなる傾向が認められた.

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© 日本応用糖質科学会
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