地下水学会誌
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論説
地下水行政の歴史的変遷
千葉 知世
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2018 年 60 巻 4 号 p. 391-408

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抄録

地下水法制度の整備における中心的役割を担ってきたのは地方自治体であるが,問題が複雑多様化する今日においては,国の役割を再検討する必要がある。そうした中で本稿は,わが国の地下水関連行政の変遷を地表水行政と対比しつつ概観すること,それを通して国家的な保全管理体制が十分に整備されてこなかった背景要因を考察することを目指した。結果,河川と比較した場合の治水・利水上のインフラ整備の不必要性,法による事前的規制の必要性に関する認識の欠如,地下水利用権は土地所有権に付随するという法的解釈の普及,経済界にとって不都合な学説の排斥,および河川事業の所管争いにより築かれた縦割り構造が,地下水保全制度整備の障害となったと推論した。

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© 2018 公益社団法人 日本地下水学会
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