2020 年 62 巻 2 号 p. 207-217
近年,多様な主体の参画による地下水保全が重要視されるようになった。これを受け本稿は合意形成研究が地下水ガバナンスに与える示唆を明らかにすることを目的とする。まず合意形成研究の主要課題および様々な合意形成研究の相互関係を整理し,それらと地下水ガバナンス研究のつながりを指摘した。その後,社会的ジレンマ研究,プロジェクト・マネジメント研究,コモンズ研究での事例研究を取り上げ,合意形成を進める要素を考察した。そしてその比較研究から①フレーミングの重要さ,②政策パッケージの提唱,③多元的価値に基づく複数のゴール設定といった要素を抽出し,それらの地下水分野への適用を示した。