地下水学会誌
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62 巻, 2 号
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巻頭言
創立60周年記念特集「地下水ガバナンス」
論説
  • 田中 正
    2020 年 62 巻 2 号 p. 167-181
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    本稿は,2019年7月28日に日本大学文理学部百周年記念館国際会議場において開催された公益社団法人日本地下水学会主催のセミナー「地下水ガバナンスの理論・事例分析と実践的プロセスへの示唆」において講演した内容に基づいて,これを加筆・修正したものである。わが国における地下水学や水文学に関する学術研究がスタートしたのは1910~1920年頃と考えられ,それからほぼ一世紀が経過したことになる。本稿では,この間における地下学の進展について,主として水循環の視点からその過程を記すとともに,2000年以降における地下水に関わる国内外の動向を踏まえて,2014年7月1日に施行された「水循環基本法」との関連において,地下水保全管理の新たな概念である「地下水ガバナンス」について世界の動向とわが国の現状についてその概要を記した。

  • 山本 晃
    2020 年 62 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    長野県安曇野市は「安曇野市地下水資源強化・活用指針」および「安曇野市水環境基本計画」を地域の利害関係者からなる委員会により策定した。本説では,これら委員会にて見出された合意形成に資する九つの要素(①利害関係者の参画,②学識者の存在,③科学的知見に基づく認知,④共通認識醸成,⑤地下水の可視化,⑥未来志向への変化,⑦専門少人数による提案,⑧熱意と誠意,⑨自治体の一貫取組)に係る事例を紹介する。

論文
  • 千葉 知世
    2020 年 62 巻 2 号 p. 191-205
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    多様な主体の参画・協調や領域間の統合を中核とする統合的水資源管理論を継承し,「地下水ガバナンス」の議論は誕生した。2011年に開始された国際機関による「地下水ガバナンスプロジェクト」では,世界の地下水ガバナンスの状態がレビューされ,その進展状況は不十分と評価された。わが国では従来政府・自治体によるトップダウン的なマネジメントを地下水保全管理の主な形態としてきたが,水循環基本法の制定等を契機に,ガバナンスの概念を取り入れようとする動きが見られている。本稿は,「地下水ガバナンスプロジェクト」の枠組みに従って日本の地下水保全管理の現状を概観し,ガバナンスの概念を導入する意義とそれに際しての課題を論じた。

  • 遠藤 崇浩
    2020 年 62 巻 2 号 p. 207-217
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    近年,多様な主体の参画による地下水保全が重要視されるようになった。これを受け本稿は合意形成研究が地下水ガバナンスに与える示唆を明らかにすることを目的とする。まず合意形成研究の主要課題および様々な合意形成研究の相互関係を整理し,それらと地下水ガバナンス研究のつながりを指摘した。その後,社会的ジレンマ研究,プロジェクト・マネジメント研究,コモンズ研究での事例研究を取り上げ,合意形成を進める要素を考察した。そしてその比較研究から①フレーミングの重要さ,②政策パッケージの提唱,③多元的価値に基づく複数のゴール設定といった要素を抽出し,それらの地下水分野への適用を示した。

  • ─地下水の社会的価値を分析枠組みとして─
    八木 信一, 遠藤 崇浩, 坂東 和郎, 中谷 仁
    2020 年 62 巻 2 号 p. 219-232
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    本稿では,地下水ガバナンスの構造や機能に関する時間的な変化としての地下水ガバナンスの動態を取り上げる。地下水をめぐる政策課題の変化(多層化)を踏まえて,複数の事例を包含する分析枠組みとして地下水の社会的価値を示し,社会的損失の発生対応,社会的損失の回避,さらには社会的価値の創造への拡張を伴いながら,地下水ガバナンスの程度が強まってきたことを示す。さらに,地下水ガバナンスの特徴であるマルチ・アクター,マルチ・レベル,およびポリシー・ミックスが,地下水管理の変化にどのように現れているのかについて,地下水インフラの事例を通して明らかにする。

資料
  • 中川 啓, 八木 信一, 石原 成幸, 蛯原 雅之, 遠藤 崇浩, 新貝 文昭, 竹内 真司, 中谷 仁, 坂東 和郎, 平山 利晶
    2020 年 62 巻 2 号 p. 233-254
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    公益社団法人日本地下水学会では,水循環基本計画に示されている多くの施策項目,特に持続可能な地下水の保全と利用に関わる「地下水ガバナンス」を中心とした調査・研究を,社会科学的な観点から行う「地下水ガバナンス等調査・研究グループ」を立ち上げ,検討を行ってきた。この調査・研究グループのうち,国内関連事例を担当しているグループCとして,総勢15名のメンバーで活動に取り組んできた。本稿では,そうした活動の中で整理した,地下水ガバナンスに関する国内関連事例についてとりまとめたものについて資料として公表するものである。収集された事例は,58地域からの65事例であり,いくつかの基本的な特性により分類を試みている。

特別寄稿「トンネルと地下水」
論説
  • -私が学んできたこと-
    大島 洋志
    2020 年 62 巻 2 号 p. 257-281
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    筆者は,当時の国鉄に就職し,鉄道技術研究所地質研究室に配属されて以来,これまで55年以上に渡って山岳トンネル,とくに地下水が関わる様々な問題の解決に携わってきた。日本地下水学会誌の特集号に論文を投稿する機会を得たことから,筆者の知見の集大成として,トンネルと地下水に関してこれまでに学んだことを事例とともに紹介する。トンネル内に湧出する地下水を「トンネル湧水」と呼ぶ。論文では,まず,「トンネル湧水のイロハ」として,トンネル湧水の処理および区分,トンネル恒常湧水量の考え方や経緯,トンネル工事の難易は湧水と地圧で決まる理由を事例とともに概説する。そして,「トンネルと地下水との関係について調査・研究したこと」として,水文調査法等の体系化,路線選定,施工法や湧水の有効活用,湧水量実態調査,近接するダムとトンネルとの相互関係,トンネル湧水の水質等の各項について述べることとする。この論文が,トンネルに関わる研究者や技術者の一助になれば,幸いである。

  • 西垣 誠
    2020 年 62 巻 2 号 p. 283-301
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    トンネルや地中構造物を施工することによって地下水環境に与える影響,また,地下水がトンネル施工時に与える影響について,過去の事例を踏まえながらその対応の歴史を解説した。さらに,トンネル施工が地下水環境へ及ぼす悪影響を防ぐために,これまで開発されてきた新しい施工技術の歴史についても概観した。特に,止水方法,水抜き方法それぞれの様々な施工方法とその難しさ,また現場の状況に応じてどのように使い分けるべきか等の考え方について述べた。

論文
  • Jiaqi LIU, Tomochika TOKUNAGA
    2020 年 62 巻 2 号 p. 303-322
    発行日: 2020/05/28
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    A 3D numerical model was developed to simulate seawater intrusion and aquifer recovery in Niijima Island under the future Nankai earthquake and tsunami scenario. The FEFLOW code was used to solve density-dependent groundwater flow and mass transport in unsaturated-saturated porous media. The simulations indicated that the maximum amount of seawater intrusion during the tsunami was controlled by the total unsaturated void space of the soil beneath the inundation area. After the tsunami, directions of seawater movement and flushing time depended on the pre-tsunami groundwater flow conditions and bedrock structures. Some groundwater was found to be survived from salinization, and showed the potential to provide water supply in an equivalent amount of the pre-tsunami level without worsening the recovery process. The simulated attempt to remove the intruded seawater from a polluted well could accelerate aquifer recovery but might not be practical due to the cost of maintaining intensive pumping over years.

資料
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