別府温泉の泉質変化と温泉水の水質の鉛直分布から流動系を推定するため,52ヶ所の温泉井を対象に階層的クラスター分析,因子分析,水文学的解析を行った。本地域の泉質はG1, G2a, G2b, G2c, G3と5つのグループに分けられ,G1とG2aは亀川地熱域に,G3とG2cは別府地熱域に主に分布し,G2bは両領域に分布する。各グループの泉質の平面分布は過去の研究から推定された温泉水流動経路と概ね一致するが,別府駅周辺では,1980年代と比べ,Cl-/HCO3-の濃度比が減少し,泉質変化が認められた。泉質の鉛直分布から標高によって温泉水の流動系が異なることが推定され,さらに別府地熱域の海岸付近の温泉井では海水の混合が認められ,海水の混合率は12%と見積もられた。