震災時の断水は今なお大きな社会課題である。全国で水道施設の耐震化が進められているが,他方でそれを補完する代替給水の必要性も指摘されている。本稿の扱う災害用井戸はその一つである。本稿では地域防災計画を活用して災害用井戸の全国的な普及状況を明らかにしつつ,それを「用途」という視点から分類した。その結果,それは飲用と生活用を中心としつつも,防火,医療,畜産と従来の指摘よりも幅広いことを明らかにした。また消雪用井戸と農業用井戸の防災転用を想定する自治体の存在を明らかにした。そしてそれら想定用途の空間分布を地図化し,その地域的多様性を明確にした。