2021 年 63 巻 4 号 p. 279-286
本研究では,青森県の大和沢川扇状地に位置する河川水,湧水や井戸水の採水・分析を行ない水質の季節変動を検討し,併せて空間分布を調べた。各採水地点の主要溶存成分はCa-HCO3型とNa-Cl型が支配的であり,このうち,NO3–濃度は扇頂部の座頭石から扇端部の富田の清水にかけて高くなり,市街地では明瞭に高くなることを示した。また,主要溶存成分の季節変動によると,NO3–濃度は梅雨期よりも初春に高い傾向が認められる。地下水中の窒素は一般的に施肥起源と考えられるが,弘前市のりんご果樹園では晩秋から初春にかけて基肥が行なわれる。そのため,初春の著しいNO3–濃度の上昇は,積雪期に降下浸透がほとんど発生せず融雪期に地表水が一気に涵養されたことから生じた可能性がある。