地下水学会誌
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論文
要因分解解析による島原半島における窒素供給量変化の評価
中川 啓藤井 秀道
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2022 年 64 巻 1 号 p. 91-100

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抄録

島原半島における地下水の硝酸性窒素汚染は,依然として深刻な状況が続いている。長崎県では2006年には島原半島窒素負荷低減計画を策定し,対策が講じられてきた。本研究では,これまでに発行された計画書に付属するオープンデータや自治体が公開しているデータを活用して窒素負荷ポテンシャル,つまり汚染源から地下水への窒素供給量の要因分解解析を実施し,どのような要因によって窒素供給量が変化してきているかについて検討を加えた。すなわち,農業由来,畜産業由来,家庭生活由来の窒素供給量の変化を,(1)窒素強度要因,(2)構造変化要因,(3)規模要因に分解し,各要因の影響を定量的に明らかにした。その結果,2013年度から2019年度における3部門の合計は,窒素供給量について若干の低下傾向が見られたが,それは畜産業の構造変化要因,農業の作付面積要因によることが明らかになった。つまり,この期間の窒素供給量のわずかな減少は,主に畜産業における窒素供給量の小さい家畜への変換が進んだことと,農業における作付面積が減少していることによるものである。

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© 2022 公益社団法人 日本地下水学会
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