2021年の豪雨時に静岡県熱海市の逢初川で土石流が発生し,住宅地に甚大な被害をもたらした。これは一般の土石流と大きく異なり,渓流の源頭部に盛っていた捨土が降雨によって崩壊し,土石流が発生したものであった。被災後に静岡県により行われた調査によると,逢初川だけでなく隣接する鳴沢川からも地下水が流れ込んできていて,多量の水が盛り土にはいって崩壊を生じさせたことが明らかになった。また,盛り土の施工も良くなかったと推定されている。我が国における過去の豪雨や地震時の種々の土石流事例と比較したところ,熱海のケースは,崩壊土量が多く,崩壊土が渓流に流れ込む場所であったことなどが土石流を生じた原因と考えられた。