地下水学会誌
Online ISSN : 2185-5943
Print ISSN : 0913-4182
ISSN-L : 0913-4182
透過性地下水浄化壁による汚染地下水め浄化効果について
中島 誠坂本 大根岸 昌範下村 雅則
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 42 巻 1 号 p. 27-45

詳細
抄録

有機塩素系化合物により汚染された地下水が工場敷地外へ流出するのを防ぐため.零価の鉄粉を用いた透過性地下水浄化壁を実際の地下水汚染サイトに設置し.対策効果のモニタリングおよび浄化壁の耐久性についての予測検討を行った.鉄粉の分解能力については.あらかじめバッチ試験で確認した.また.浄化壁の耐久性については.現地の地下水を用いたカラム試験および浄化壁設置後の地下水モニタリングの結果をもとに求めたパラメーターを用いて.下村ほか(1998)の提案した反応モデルにより予測検討した.
設置した透過性地下水浄化壁は.厚さ0.6m以上.長さ3.0~6.Om.高さ7.Omのブロック状の反応帯を千鳥状に配置し.地下水の流れに対して透過性の壁と同様の役割をもたせたものであり.玉石混じり砂礫層からなる第一帯水層を通過してきた汚染地下水を浄化対象としている.
浄化効果については.浄化壁の上流部と下流部に設置した観測井戸の地下水モニタリング結果より.地下水環境基準に適合する濃度まで汚染地下水を浄化していることが確認された.
浄化壁の耐久性については.地下水の流速が現場で実測された平均流速の10倍値であったとしても.約17000日後(約47年後)までは地下水環境基準値を超える濃度の汚染地下水の流出が防止されることが予測された.この予測計算結果から.47年以内に行われる工場の解体や増改築の際に汚染土壌の掘削除去等の汚染源対策を行えば.工場の操業に影響を与えることなく.低コストに汚染対策を行うことが可能になると考えられる.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地下水学会
前の記事 次の記事
feedback
Top