抄録
施設の入浴環境と看護職の入浴ケアに対する意識と実践を,生活の継続性・健康管理・基本的看護の構成要素を整える手段としてのケア(以下:基本的看護の側面)の3側面から調査した.そして, 3側面から入浴ケアを捉えている看護職と捉えていない看護職の背景の違いを探索することを目的とし,今後の施設ケアのあり方を検討した.県内のすべての特養110施設と老健70施設の看護職(1施設3〜5人)を対象に郵送調査を行った.施設からは120施設(66.7%),看護職からは346名(特養179名,老健167名)の回答が得られ,これを分析対象とした.その結果,3側面からみた意識は健康管理的側面の直接介助に関する項目にのみ差がみられた以外は,両施設ともに同様の意識をもっていた.しかし,実践では老優のほうに実施するものが多く,特に健康管理的側面の事故防止の点において著しかった.生活の継続性の側面や基本的看護の側面は両施設において十分には行われていなかった.3側面から入浴ケアを捉える看護職の特性は,経験年数が5年以上と長く,夜間入浴の実施についても実施したいと意欲的な考えをもつ看護職であった.ケア提供方法や特養の人員配置基準の見直し,個別性を重視したケアの重要性が示唆された.