2017 年 21 巻 2 号 p. 42-50
本研究は,認知症を有する高齢慢性心不全患者の家族がとらえる心不全の増悪徴候を明らかにすることを目的とした.対象者は,認知症を有する高齢慢性心不全患者と同居する家族10人として半構成的面接を行いデータ収集し,質的記述的に分析した.認知症を有する高齢慢性心不全患者の家族がとらえた心不全増悪徴候として,【目にみえる身体の変化がある】【発話,身支度,移動がままならなくなる】【その人なりの身体の不調を表すようになる】の3つのカテゴリーが抽出された.家族がとらえる心不全の増悪徴候は,家族が患者のいつもの言動や生活状況を知っているからこそ気づくことのできる些細な変化や異和感からの気づきであった.認知症高齢患者の心不全の重症化を予防していくためには,本研究で見出された3つのカテゴリーを念頭において,家族がとらえているその患者特有の心不全増悪徴候を家族と共に確認することで,重症化しない早い段階で受診につなげてもらえるような支援をしていくことが必要であると考える.