2017 年 22 巻 1 号 p. 71-80
本研究は,高齢者施設で生活する認知症高齢者が日常生活を送るうえでアドボカシーを必要とする状況と,看護師が実践するアドボカシーの内容を明らかにすることを目的とした.高齢者施設に所属する認知症看護認定看護師9人に半構成的面接を実施し,得られたデータを質的に分析した.認知症高齢者は,【意思決定がむずかしい】【尊厳が尊重されにくい】【集団生活においてコミュニケーションが図りにくい】という状況でアドボカシーを必要としていた.看護師が実践しているアドボカシーには,【意思決定を支援する】【利益を保護する】【尊厳を守る】【集団生活の調整をする】ことがあった.認知症高齢者が権利の主体であるために,看護師は,高齢者施設という環境の特徴を理解し,認知症高齢者の意思決定支援と利益保護とのバランスをとりながら,アドボカシーを実践することが必要であると考えられた.