老年看護学
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看護師による身体拘束に関する最高裁平成22 年1月26日判決と一般病床の身体拘束ガイドラインに着目した文献検討
柏﨑 郁子佐々木 晶世碓井 瑠衣叶谷 由佳
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2017 年 22 巻 1 号 p. 98-106

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抄録

 日本では一般病床での身体拘束を規制する法律は存在しない.一般病床は治療を優先する特性から,介護保険施設向けの「身体拘束ゼロへの手引き」(以下,「手引き」)の要件をそのまま適用するには困難さがある.最高裁判所平成22年1月26日判決は,一般病床での身体拘束に法的な判断を下した唯一の最高裁判決である.その判例評釈と,各医療施設の身体拘束ガイドラインの内容を「手引き」の3要件をもとに比較検討した.結果,裁判で身体拘束是非を判断する根拠は〈切迫性を判断すること〉〈拘束に代替する手段の実施〉〈拘束を行う時間〉〈医師の参加〉〈拘束中における状態確認〉〈説明〉〈承諾書〉〈記録〉であり,同様の視点で一般病床の各ガイドラインでは具体的な看護内容が示されていた.一般病床で身体拘束をする際には,「手引き」の3要件の考え方を踏襲した多くの複雑な手順が必要とされていることが明らかとなり,期待される看護の責任が多岐に渡ることが示唆された.

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