2020 年 24 巻 2 号 p. 65-75
本研究の目的は,介護老人保健施設における看護・介護スタッフによる自己決定支援の積み重ねが,認知症高齢者に及ぼす効果と支援実施の課題を明らかにすることである.介入実施者であるスタッフ27人が,間食・更衣など4つの活動場面で認知症高齢者に行動の選択肢を提示し,選択理由をたずねる支援を8週間実施した.評価項目は認知機能検査(MMSE),前頭葉機能検査(FAB),精神機能障害評価票(MENFIS),QOL評価尺度(DHC)得点として,ベースライン期間,介入期間,フォローアップ期間での群内前後比較で評価した.
分析対象となった認知症高齢者16人への平均介入回数79.6回,実施度63.5%であった.介入前後のFAB(p=0.007),MENFIS(p=0.014),DHC(p=0.005)が有意に改善した.スタッフからみた認知症高齢者の変化は『「ありがとう」ということばが増えた』『選択の機会があることで笑顔がみられた』などであった.日常生活における自己決定支援の積み重ねが,認知症高齢者の生活によい影響を与えることが示された.