本研究の目的は,文献検討により身体疾患のために入院した認知症のある人の経験を,認知症のある人の言動から探求することである.2004~2019年8月に発表された質的研究を検索した.日本語の文献は医学中央雑誌WebとCiNiiを用いて,英語の文献はCINAHLを用いて,「認知症」「入院」「経験」とその類語をキーワードとして検索し,日本語の文献は計2件,英語の文献は計10件抽出された.
文献の結果に記述された「身体疾患のために入院した認知症のある人の経験」について質的帰納的に分析し,【スタッフの対応が安心にも脅威にもなる】【自分のおかれた不慣れな状況に対して動揺し不安を抱く】【自由を奪われ人としての価値が低められる】【他患者との関わり方を選んで過ごす】【日常から遮断されても生活に豊かさを求める】【体調や受けるケアに対して自律的であろうとする】【慰めや平穏をもたらす家族を支えにする】という7カテゴリーが得られた.
この結果は,認知症のある人の入院中の言動が,どのような理由で生じているかを看護師が理解するために活用できるものである.