2021 年 26 巻 1 号 p. 123-130
本報告の目的は,地域在住高齢者に対するヘルスアセスメント演習による学生への教育効果と高齢者の経験を明らかにすることである.調査方法は,学生に自由記述式の質問紙調査,高齢者に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.結果,学生49人と高齢者6人から協力が得られた.学生からは【個別性がある高齢者の身体・精神・社会面に関する理解が深まった】【高齢者の健康状態を包括的にアセスメントする視点がもてた】【高齢者に応じたコミュニケーション・測定技術の手ごたえと個々の課題を明確化できた】【老年看護への能動的な学習意識が芽生えた】の4カテゴリーが得られた.高齢者からは,【自己の健康に対する関心が高まった】【自分なりの生きがいを見いだす機会を得た】【年長者として学生に対して率直に伝えることへの抵抗を感じた】の3カテゴリーが得られた.本演習は,学生には高齢者の全人的な理解を深め,健康状態を包括的にアセスメントする視点を養う教育効果があり,高齢者には健康への気づきの場,生きがいを見いだす経験となっていた.