2023 年 28 巻 1 号 p. 62-71
本研究の目的は,特別養護老人ホーム(以下,特養)入居者のエンドオブライフにおけるケアニーズの構造を明らかにし,入居時から死亡までのケアニーズに基づくケアの体系化への示唆を得ることである.特養での看護経験があるエキスパート看護師36人を対象にフォーカスグループインタビューを実施し,語られた118事例を質的帰納的に分析した.特養入居者のエンドオブライフのケアニーズは,【いつもと違う症状を言語で表出できない】【身体機能が低下し続け新たな健康障害が生じる】【痛みと意欲低下により動くことが難しい】【嚥下機能が低下し満足できる食事摂取が難しい】【不安で気持ちが落ち着かない】【安らかに最期までなじみの場で過ごすことが難しい】の6カテゴリーが互いに影響し合い,コンフォートな状態を目指す際のケアの必要性が拡大していく構造が示された.その根本には,避けることができない老衰がある.生活の延長線上で死を迎えるまで,急変の回避や苦痛の低減などを意図した高度な予後予測と適切な判断をもとに,長期的にケアニーズを充足する援助が必要である.