2023 年 28 巻 1 号 p. 72-79
本研究の目的は,高齢民生委員が地域に暮らす高齢者を支援する体験を明らかにすることである.
対象者は,地域に暮らす高齢者を支援した経験がある60歳代後半~80歳代前半の民生委員で,男性女性各5人の合計10人であった.高齢者支援を通して感じたり考えたりしたことを中心に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.
その結果,高齢民生委員が地域に暮らす高齢者を支援する体験として,【高齢者の対応で悩む】【高齢者に関わったことで賜物を得る】【経験を基に高齢者の気持ちを推し量る】【高齢である自分の今後を想像する】の4つのカテゴリーが抽出された.
高齢者を支援する際に,自身の経験を基にして高齢者の気持ちを推し量ることができるのは,高齢民生委員の強みだといえる.その一方で高齢民生委員は,自身の加齢や体力の低下と向き合う体験をしていた.そのため,関係機関は,高齢民生委員の身体面に配慮し支援を行う必要がある.