2025 年 30 巻 1 号 p. 41-52
本研究の目的は,長期療養高齢者の苦痛を緩和する看護実践尺度の信頼性および妥当性を検討することである.文献より項目を作成し,内容的妥当性の検討を経た48項目の尺度原案について,医療療養病床に勤務する看護師を対象に調査を行い,信頼性と妥当性を検討した.探索的因子分析の結果,尺度は,【苦痛のサインをとらえる実践】【苦痛を特定する実践】【意向・ニーズをとらえる実践】【多職種連携により苦痛を予防または緩和する実践】【日常の関わりのなかでの高齢者の尊厳を守る実践】の5因子41項目の構成とした.Cronbachのα係数は,全体で0.948,各因子では,0.824~0.902の範囲であり,内的一貫性を確保していることを確認した.また,外的基準との相関係数は0.706であり,併存的妥当性を確認した.さらに,長期療養高齢者の苦痛を緩和するケア実践を1次因子,抽出した5因子を2次因子としたモデルのデータへの適合度は,CFI=0.919,RMSEA=0.070であり,構成概念妥当性を確認した.本尺度は,看護師が高齢者の苦痛を緩和するための看護実践を振り返り,自身の看護実践を高めることに活用できる.これにより,高齢者の苦痛を予防・緩和し,高齢者に安寧をもたらすことに寄与することが期待できる.