地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
那須地域における農村空間の商品化による観光発展の可能性
田林 明淡野 寧彦横山 貴史𠮷田 国光
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2008 年 1 巻 2 号 p. 83-113

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抄録

日本における現代の観光活動は多様化しており,著名な名所・旧跡や大規模な観光施設などが注目されるばかりでなく,棚田の景観や里山,伝統的な町並み,農山村の景観や産物,食文化,生活様式などが観光資源化される傾向が強まっている。特に,グリーンツーリズムやエコツーリズムといった農村資源の活用,言い換えれば農村空間の商品化による観光活動が盛んになっている。この報告は,バブル経済崩壊後に停滞傾向がみられる既存の観光地が,農村空間の商品化によって発展する可能性を,栃木県那須地域で検討する。塩原温泉や那須高原など既存の観光地においては,それぞれハイキングコースの整備や体験農園,農産物直売所,地元の食材を提供するレストランの設置など,いわゆる農村空間の商品化による観光開発が近年では活発になっている。さらに,両観光地の中間に位置する広大な那須扇状地の農村景観や開拓の歴史,そして最近完了した農林水産省の田園空間博物館事業の成果などが観光資源化されることによって,個々の観光地が統合され,面的に広がる広域的・複合的な観光地域が形成され,それが那須地域全体の発展に結びつく可能性をもっている。

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© 2008 地理空間学会
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